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淡雪に燃ゆる想いを【鬼滅の刃】

第1章 淡雪に燃ゆる想いを


月光が輝く中、前を歩く彼を見て思う。猗窩座は鬼の割に髪の色がとても綺麗だ。ピンク、可愛い色。なぜその色にしたのかと聞こうとしたが、あたしはふと昼間の出来事を思い出した。

「そういえばさぁ」

花札の耳飾りをした鬼狩りが居たのと彼に伝えた。すると猗窩座は目を丸くしてあたしの話も聞かずに「殺したか?」と聞いてくる。

「殺したって……そんな訳ないでしょ」

あたしの言葉に彼の瞳がギラリと鈍く光った。

「逃したのか?」

「違う。あたしがお金無くて困ってたのを助けてくれたの」

鋭利な刃物のような猗窩座の鋭い視線があたしに突き刺さった。淡いピンクの髪の毛に反して、彼は今にもあたしを殺しそうなほど怖い顔をしてる。

「そんな怖い顔されてもさ。普通、助けてくれた人殺さないし」

「無惨様が仰られた事を覚えてないのか」

「だからぁ……炭治郎はそういうのじゃな、」

言いかけた瞬間あたしの顔目掛けて猗窩座の右手が飛んでくる。咄嗟にかがもうとしたが、彼の手は顔面では無くあたしの頭にドンと置かれた。その重みで体勢が崩れる。そして頭上に、ヒュンと空気を切るような音を立てて日本刀が過ぎていく。

「え、」

それはあまりにも鮮明な音で、ゾワリと背筋が冷たくなった。自分の髪の毛が数本ちらりと手元に落ちる。訳が分からず猗窩座を見上げたが「ここにいろ」とだけ言って、ピンク色は飛び跳ねるように森の中へ消えた。

「…あか、ざ………待っ……!」

喉が閉まっていて声が出ない。猗窩座があたしを一人にして直ぐに、人間の悲鳴のようなものが聞こえた。腰が抜けたのか、立ち上がれないあたしは強く耳を塞ぐ。塞いでも耳奥に聞こえる断末魔。目を固く閉じると生ぬるい赤を感じる鉄の臭いが鼻をツンとついた。痛い音が聞こえる、あれは人が死ぬ音だ。猗窩座の唸るような声、血の匂い。冷たい空気があたしのほおを撫でて、そして風が嗤った。
生死を感じると、耳を塞ぐ手の爪がぐっと伸びてくる。尖った牙が生えて、獣のように暴れ出したくなる。人を殺したいなんて思った事ないのに、簡単に殺せると誰かが耳元で囁く。あたしは心に叫び訴えた。

「嫌だ!殺さない!あたしは鬼じゃない!!」

言い聞かせる。だけど聞こえない。あたしの体は真っ暗な底の無い海に深く堕ちていく。
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