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Amor vincit omnia__愛の勝利

第13章 告白(火神大我)




「…屋上か…?」


確かサボり癖のあった彼女がよく居たのは屋上だったなと思い出して屋上へ続く階段に足をやる。まだ2月の寒い時期というのに屋上に居るのかと疑問を抱きつつ扉に手をかけた。いつもなら閉まっているはずのそれはギギギと重い音を出しながら動く。
ふいにびゅうと吹き込む風が火神の身体を冷ましていく。


「…いた」


屋上の隅に頼華はいた。御丁寧にコートを羽織ってひざ掛けまで掛けて。寝ているのだ彼女は。



「…おい、起きろ」
「…んー……」
「ったく…風邪引くぞ」
「…ん…か、がみ…?」


漸く目を覚ました彼女はニコリと微笑む。
彼女を立ち上がらせようと手に触れるとだいぶ冷たくなっていた。


「…なんでこんな寒ぃのにンなとこで寝るんだよ」
「別にーいいじゃん」
「はぁ……てか部活は」
「ん?…あー、乗らなくて」


乗らなくて、とは気分が乗らないということだろう。というか話にならない。けれど火神は彼女から目を離せなかった。



「…なに、人の顔じっとみて」
「…いや、」
「変な火神ー」

そう笑って火神の手の内をすり抜けていこうとするそれを火神は咄嗟に掴んでいた。



「…部活行くってば」
「…そうじゃねぇ」
「は?火神が連れ戻しに来たんじゃないの?」
「そういうことじゃねーよ」


お前、その火神っての止めろよ
火神の言葉に彼女は目を見開く。彼の真剣な眼差しに目をそらす事は出来なかった。
火神の感じていた違和感。それは日本だからと大我、からいつしか火神と頼華に呼ばれていたことだった。それが近くなっていた距離を離された気がしていた。



「……」
「………頼華」

長い沈黙のあと火神から発せられたのは己の名前。久しぶりに聞く自分の名前。



「………ばか、」
「……」
「…火神って呼べってそっちだって言ってたじゃんか」
「…あぁ」
「…狡いよ」
「悪い」
「ばかがみ。ばか、ほんと、ばか」
「…もう分かったって」

彼女の手を引き抱き締めてやればだいぶ冷えている彼女の身体を己の身体で暖めるようにして丸くなった。



「ちょっと、好きな子、」
「…は?」
「好きな子に勘違いされるよ、」


ごめん、今まで告白されていたの見てたんだと彼女は言う。好きな子いるんでしょ?と。

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