第11章 約束(織田信長)
白無垢─全体的に純白を纏い襟元には赤、裾元には金の刺繍が施されたそれを身に纏う頼華と全体的に黒を基調とし白と金が施された羽織袴を身に纏う信長。優しげな表情で頼華の手を取りながら城下を練り歩く信長の姿に城下に住む人々を含め家臣達も笑顔だった。
結納が無事に終わり、そして今日もまた宴が開かれる。
結納後、信長から少し話があると言われた頼華は天守へ向かっていた。
「来たか、頼華」
「お話って…どうかしましたか?」
そう頼華が問うと同時に信長から抱き締められた。
「…信長、様?」
「…とても綺麗だったぞ。」
「!!…ありがとうございますっ」
「手を出しそうになった」
信長の言葉に顔を赤らめる頼華。
「…この後の宴、貴様はどうする?」
一瞬信長の言葉に少し疑問を抱いた頼華だったが、信長の言葉─つまり何を着るのかと言いたいんだろうと思った。
結納や宴の準備を自分達以上に打ち合わせしていてくれた秀吉達からの祝いの席を中座するのは有り得ないだろう。
信長と過ごしてきた1年、時折このように言葉足らずの所もあるのだと頼華は理解していた。
「信長様は何をお召に…?」
「俺はこのまま、なのだが、頼華」
「…?」
「貴様にはこれを着せたくて、な」
そういうと信長がいつも鎮座している場所のすぐ横に黒い布で覆われた物があった。それを取り除く信長。
「!…これ、って…!!」
「『うぇでぃんぐどれす』というものらしい」
「どうして…?」
「…貴様に似合いだったからだ」
ぷい、と顔を背ける信長。
「…信長様、」
「…!」
思わず抱きついた頼華を信長は優しく受け止める。
「ありがとうございます…!」
「…泣いたり笑ったり忙しい奴だな」
そして宴の席には信長からプレゼントされたウェディングドレスを身にしている頼華の姿が。
「頼華様、」
「あ、三成くん!」
「おめでとうございます。それと凄くお似合いですよ。」
「ふふ、ありがとう」
「実は、ですね。その『うぇでぃんぐどれす』────」
信長様が作らせたものなんですよ、と三成は言う。曰く、貿易商に話を聞き針子達に作らせたものらしい。それを聞いて頼華は更に嬉しくなった。