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Amor vincit omnia__愛の勝利

第4章 安らかなひととき(XANXUS)



妊婦の頼華の身に何かあってはお腹の子供も影響を受けかねない。XANXUSを心配して顔を覗き込む頼華の目には少し涙が溜まっていた。自分を守ってくれようとするのは嬉しい。だがそれでXANXUSが傷つくのであれば話は別だ。少し殺気立ってジルたちを見つめる頼華の目は母親の目のそれだった。お腹の子供をましてや愛しい人を傷つけるのは許さないとばかりに頼華も己の匣兵器を開匣した。頼華の匣兵器─頼華は元々幻の風の守護者ではあるが沢田綱吉の従姉妹、というのもあってかXANXUSと同じく大空の波動も流れていた。その為彼女の匣兵器はXANXUSと同じライガーであり、天空風ライガー(リグレ·ヴェント·ディ·チェーリ)の雌─エマと言った。エマは咆哮で撃破すると主の頼華と同じようにXANXUSの匣兵器であるベスターに寄り添った。

「…XANXUS…?」
「…てめぇは、」
「ん、ごめんね。でも…どうしても」

あなたが傷つくのは我慢できなかった、と言う頼華の頭を撫でるXANXUSの表情は憤怒の手前。頼華に怒っているのではない、少し隙を与えてしまった己にと─あとは目の前の敵にだ。一気にXANXUSの顔に古傷が浮び上がる。頼華はその傷をひと撫でしギリリと歯を食いしばった。
そこからはまぁ早いものだった。XANXUSとベスターによりジルたちは跡形もなく消え去った。

「…なぜ」

お前が泣きそうなんだとXANXUSが頼華に問う。XANXUSが負けるなどとは思っていないが頼華は俯いたまま唇を噛み締めていた。ふとXANXUSは頼華の頬に手を添える。少しびくっと反応し顔を上げた彼女の唇からは相当噛み締めていたのだろう少し血が流れていた。それを自分の隊服が汚れるのも厭わずXANXUSは拭いとり頼華に口付ける。だんだんと深くなるそれはまるで頼華の気持ちを落ち着かせていく麻薬のようで。最後にペロリと彼女の切れていた唇を舐め取りXANXUSが口を開いた。

「……お前と腹のガキを守るためだ」
「?」
「…俺は俺がしたいようにしたんだ」

例え己がどれだけ傷ついても頼華とお腹の子供を守れるならそれでいいのだと語るXANXUSの目も父親のそれだった。
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