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Amor vincit omnia__愛の勝利

第21章 あなたに(跡部景吾)



「そう、だったんだぁ…」



好きだからこそ、どうしようもなく悩むのが人間だ。
私の場合、何があっても心に溜め込んで閉じこもってしまう。



「親父が連れてきた女であったとしてもだ、お前に言うべきだった。」
「…」
「あの日でなくとも、次の日学校ででも言うべきだったんだよな。」



あぁ、この人はこんなにも優しいのだと改めて実感させられる。


「本当に、すまなかった頼華」
「…景吾くん、」
「…頼華?」
「…あ、あたしが、弱いだけだよ」
「…」
「もう、景吾くんの足枷になりたくない。だから、───」


別れて下さい。
そう告げようとした言葉は景吾くんの手によって遮られた。



「…馬鹿なこと、考えてんじゃねぇ」
「っ…だって!」
「俺は絶対別れねぇぞ。」
「…」

「なぁ、お前じゃないと駄目なのは、俺の方なんだよ」
「っ……!!」


いつもは自信家な景吾くんからは想像もつかない、弱々しい程の声。
寂しそうな苦しそうな顔で話す景吾くんに、私は何時しか手が伸びていた。




「…頼華?」
「…ほんとはね、」
「…」
「あたしだって…別れたくない。…こんなにも大好きなんだもん」


景吾くんの手を取って、景吾くんの目を見てゆっくり話す私から決して逸らされない景吾くんの綺麗な瞳。


「…俺だって、どうしようもなく好きなんだよ頼華」



その言葉に心の中が少しずつ満たされていく気がした。
どす黒い感情もモヤが晴れるように消えていく、そんな気持ち。


気づけば涙がぽろぽろと頬を伝う。
それは留まる事を知らなくて、泣きじゃくり始めた私を景吾くんはただ黙って抱きしめてくれていた。


「愛してる、頼むからずっとそばに居てくれ」


耳元でそう囁かれて私は彼の腕の中で、小さく頷いた。







あれから、毎日のように景吾くんはお見舞いに来てくれた。

お父さんから十夜とのやり取りを聞いていたのだけれど、十夜と和解したことを景吾くんから聞いてとても嬉しかった。

小さい頃から兄のように接してくれていた十夜。
私からも、十夜とお父さんにも謝ると、お父さんは笑っていた。

順調に回復して、今日私は退院する。



「頼華。」
「え、景吾くん…!?」


病室に入ってきたのは何故か制服姿の景吾くんだった。
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