第21章 あなたに(跡部景吾)
(滝side)
頼華の殻を破れるのは景吾くんしかいない。
もう、頼華が壊れてしまう。
もちろん景吾くんもだろう。
忍足から、部活中の景吾くんのことを聞いた時、やっぱり頼華は大事にされてるんだと思った。
景吾くんは、原因がわからないからこそ、下手に動いて頼華を傷つけたくないのだろうと。
それなら、もう景吾くんに話してしまって、頼華を助けてもらおう、と。
そう決めた時だった。
隣にいた頼華が歩くのをやめた。
前を見ると、景吾くんの姿だ。
かなり眉間のシワが濃くなっている、綺麗な顔なのに台無しだよ景吾くん。と思いながらも、口を開こうとしたその時だった。
ゆっくりと頼華が膝から崩れ落ちていくのが目に見えた。
支えないと、と手を伸ばそうとした俺の手よりも先に、頼華を支えたのは、俺より遠くにいたはずの景吾くんだった。
(頼華side)
「おい、頼華、!」
「…ご、めんね」
「…頼華!」
目の前に現れた景吾くんを見た瞬間、体の力が一気に抜けた。
心配そうに、私の名前を何度も呼ぶ彼の声が少しずつ遠くなっていった。
夢の中で、私は白無垢を着ていた。
隣にいる人は誰なんだろう。顔が全く見えない。
あぁ、知らない人か、そうだよね、なんて夢の中でもネガティブに何もかも捉えてしまった。
「頼華、こっちだ」
聞きなれた声に顔を上げると、その人は景吾くんにそっくりだった。
「け、いごくん…?」
「あぁ、頼華」
こんな時がずっと続けばいいのに…なんて思いながら、更に深い眠りに誘われた。
(跡部side)
目の前で膝から崩れ落ちていく頼華を見て、一気に血の気が引いていった。
それと同時に反射的に、彼女を抱きとめた。
「…萩之介、」
「頼華を、頼んだよ景吾くん」
「…あぁ。」
彼女を抱き上げると、以前よりかなり痩せていた。
血色が悪いのか、少し顔色も白くなっている気がした。
直ぐ様俺は迎えを寄越せと連絡し、頼華を連れて病院に向かう。
いつも世話になっている病院だ。
直ぐに点滴やら処置を施してくれた。
頼華はまだ目覚めない。