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Amor vincit omnia__愛の勝利

第20章 お題2



黒崎一護

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12月になり寒さもより一層深まる中、激しい雨音が木霊する。


「あー…濡れちゃったな」

傘もってくるべきだったなと少し後悔しながら軒下で雨宿り。
朝のニュースじゃ雨なんて言ってなかったのにと思いながらも今日は朝からどんよりとした天気だった。

すれ違う男女、恋人同士であろう人達は仲良く相合傘で帰っているのを横目に、あたしは何してるんだろうと思う。
本当ならば一護と帰っていたはずの今。些細なことで昼休みに喧嘩して。一方的にあたしが怒っているだけなのは分かっているのに、たまに鈍感な一護が気づかないことに更に腹を立てただけなのだけど。
そんな自分も嫌になって口から出るのはため息ばかりだ。



「…そんなにため息ついてどうしたんだよ。」

ふと影が差してそちらを見やると傘を差した一護がいた。


「…一護」
「お前勝手に帰るなよな…心配すんだろ」
「…何よ」
「まだ怒ってんのかよ」


追いかけてきてくれたのは凄く嬉しかったはずなのに。口から出てくるのは可愛くない返事ばかり。


「…ったく、」
「え、わ、ぁ…!」
「…ほら、帰るぞ」


一護に腕を引かれて傘に入った。
ふたりとも終始無言でぱしゃぱしゃと雨を弾く音だけが耳に入った。


「ただいまー」
「え、ちょ、一護…!」
「…風呂入ってけよ」
「…」
「風邪ひいちまう」

着いたのは一護の家だった。風呂に入るよう促され渋々頷くとぽん、と大きな手があたしの頭をひとなでしていった。




「な、なにこれ…」


お風呂から上がると一護が用意していたであろう服に手を伸ばしたのだが、どう見てもそれは一護の服で。
流石に濡れた制服を着る訳にはいかず、一護の服に袖を通す。
柔軟剤に混じって、一護の匂いが鼻腔を掠めるときゅんと子宮の奥が疼いたのが自分でも分かった。



「…お、上がったな」
「…ありがと。お風呂。」
「…あぁ、」

一護の部屋に入りお礼を言うと、床に座る。
生憎、一護の家族は誰も帰ってきていない様子だった。


「…何?」

先程から一護の視線が痛い。じーっと見られている。

「いや、やべぇなって思ってよ」
「な、何が……!!」

浮遊感がしたと同時に目の前にはドアップの一護がいて、足の上に座らされたと瞬時に気づいた。


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