第20章 お題2
青峰大輝
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「あっ…体操服わすれた!」
5時限目は何だったっけと思いながら
食べ終わったお弁当箱を片付けていると次が体育だったのを思い出した。準備はしたはず…そうだ、家の玄関だと思ったがもう既に遅く。共働きの両親が自宅にいるはずもなくさてどうしたものか。
「えっ、まじ??」
「頼華ちゃん、大ちゃんに借りておいでよ!」
「えっ…あぁ、そうか!」
お昼ご飯前の4時限目。いい日和で心地いいなと何気に外を見た時に、ジャージ姿でサッカーをしていた青峰の姿があったことを思い出した。
「ちょっと借りてくるね!」
そう言い残して急ぎ足で隣のクラスに向かう。
「お、頼華じゃん」
「あ、大輝」
「ちょうどお前んとこ行こうとしてたわ」
「あたしの所?なんか用事?」
「なんか用事って…彼氏が彼女に昼休みに会いに行ったらいけねーのかよ」
「え、あ、あぁ」
「んだよその返事は」
変なやつだなと青峰は笑う。
「あ、ちょっとそうじゃなくって…!」
「これ、だろ?」
違うか?と差し出されたのは青い袋。
中を除くと体操服が入っていた。
「え、なんで」
「今日体育っつってたのに、お前たしか朝持ってきてなかった気がしてよ」
「いいの?借りても」
「あぁ、いいぜ」
ありがとう、と青峰から袋を受け取った時、ふわりと鼻を掠めたのは青峰の匂いで。思わずぎゅっと袋を握りしめた。
「かなりでけーけどな」
「んーん、いいよ」
屋上にでも行くか、と差し出された青峰の手を握って高まる鼓動を沈めるように歩いた。
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そして5時限目。体育の時間がやってきた。
「わー、頼華ちゃん大丈夫?」
「青峰くんってやっぱり大きいね」
半ズボンはどうにか膝下までで収まってはいるものの、特に上着はブカブカで、裾から手がちょこんと出るだけだった。
「裾まくれば平気だよ」
「いいなぁ、彼ジャー」
「頼華ちゃん小さいから青峰ってかなりでかいよね」
150cmほどの頼華に対して192cmの青峰。
40cmも身長差がある彼らは桐皇でも有名なカップルだ。通り過ぎる人が2度見していくほどに。
「今日ドッジボールだってー」
「あれ顔面当たったらまじで痛い」
「避けとこ」
そう口々に言う中授業が始まった。