第20章 お題2
真田弦一郎
『奥手な皇帝』のヒロイン
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「もう一本いくぞ、次!」
放課後の立海テニスコート。
副部長の真田自ら後輩たちの指導に勤しむ中、ベンチには幸村とその隣に真田の彼女、頼華が座っていた。
「ふふ、相変わらずだなぁ真田」
「よくやるよ、こんな寒い中」
マネージャーである頼華は何時もならマネージャーらしく、仕事に勤しんでいるのだが、今日は今年1番の寒波。
生憎雪は降っていないものの、時折吹く強い風に寒さを覚え仕事も手につかず、コートにいる真田を見やっていた。
「龍ヶ崎、寒いの?」
「寒いに決まってるじゃん。当たり前のこと聞かないでよね」
「何で君に怒られてるのかなぁ、俺」
ふふ、と笑った幸村は肩に羽織っていたであろうジャージを頼華の肩にかけた。
「え、幸村寒くないの?」
「そろそろ動こうかなって。暑くなるから平気さ」
「そっか。なら遠慮なく」
コートに向かう幸村と入れ違いに、指導が終わったであろう真田が何か幸村と喋っている。
「あ、弦一郎」
はい、タオル、と手渡すと頼華の手がかなり冷たくなっていることに気づいた。
「む、冷たくなっているではないか」
「だって今日寒すぎ!」
「そうか?俺は暑いのだが」
「動いてるからじゃん。…体力バカ」
「何か言ったか?」
「なんでもないです」
ふと自分の肩にかけられていたジャージを取られた。
「ちょ、寒いんだってば…!」
「これは、幸村のか?」
「そうだけど…って」
真田の顔を見ると怪訝そうな顔をしており咄嗟に考えていたであろう真田の気持ちが理解出来た気がした。
「もしかしてヤキモチ?」
「なっ…!そ、そのような事など!」
「顔みたらすぐ分かるよ」
ツン、と真田の眉間に手をやれば、やめろ、と手を握られた。
「あたしは弦一郎のジャージがいいなぁ」
「な、何をっ…!」
「弦一郎、ジャージ貸して?」
ねぇ、お願い、と上目遣いで見られれば真田の耳は赤くなっていた。
「…まぁ、そうだな」
と、頼華が肩に羽織る幸村のジャージを取ると、いつ脱いだのであろう、己のジャージを羽織らせた。