第19章 内に秘めるもの(男鹿辰巳)
「姫川、あんた何処に…」
「…ん?彼氏のところ」
「…は?彼氏って…まさか男鹿…!?」
「そうだけど?じゃ。」
背にどす黒いオーラを背負って階段をあがっていく頼華に、寧々は思わずゴクリと唾を飲み込んだ。
「あれ、知らなかったの?」
あぁ、そうか暫く学校来なかったもんねぇと夏目は楽しそうに笑っていた。
「…姫川ってあんなんだっけ?」
「ん?…あぁ、あれが本性だよ、彼女」
さぁて、男鹿ちゃんはさて置き、クイーンはどうなるんだろうね、と口元に弧を描いた。
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屋上についた頼華の目の前には、必殺技を炸裂させたであろう邦枝と、屋上の床に伏せ、ぴくりともしない男鹿。
「…はぁ。」
「…姫川さん。」
「姉さん!!」
後ろからバタバタと寧々が掛けてくる。
「違うんです、男鹿じゃない、あたしと千秋がやられたのは…ワナだったんです!」
「…え?」
「…ふふ、」
美破、と呼ばれるガタイのいいオカマ…もとい、女?がいた。
「…全てはあんたと男鹿を戦わせるためのワナ、よ」
男鹿と邦枝を戦わせ、邦枝がバテたところで倒し、石矢魔のクイーンになろうと企んでいたワナだった。
「……おい」
ベラベラと美破が話している間に、美破は男鹿によってボコボコにされ、何度もやかましく喚くため、地面にめり込んだ。
「…ったく、人がせっかく我慢してたのによ」
「ダー!!…あい!!」
ベル坊が近くに来ていた頼華を見つけた。
「お、頼華なんでお前が…」
「…ちょっと、用があって」
「何だ?」
「辰巳にじゃないよ」
「えっ?(今、呼び捨てで呼んでた!?)」
「……あんたに用があんの、邦枝葵」
ふぅ、と頼華がひとつ、ため息をつくとどうだろうか。真っ黒だったはずの彼女の髪の毛は、みるみるうちに真っ白になっていった。
と、同時に邦枝のすぐ後ろに着く。
「勝手に勘違いして、突っ走って、
人の彼氏に怪我させてんなよ」
邦枝は咄嗟に木刀で対処しようとするが、それよりも頼華の動きは遥かに早く、邦枝の頭を掴むと地面にたたきつけた。
その衝撃は凄まじく、周りの地面はガタガタにヒビが入り、真下の階の窓ガラスは全て粉々に砕け散った。