第19章 内に秘めるもの(男鹿辰巳)
「あ、葵姉さん…!」
「駄目だよ、手を出しちゃ」
咄嗟に邦枝に走りよろうとする寧々を夏目は制止した。
「葵姉さんがやられるなんて…姫川頼華…何者?」
「ん?頼華ちゃんは元々強いよ。
伊達に姫ちゃんの妹ってだけじゃない」
どうやら知った様子の夏目は、やっぱ面白いなぁと思った。
「もう済んだ。」
なんだかスッキリした顔で、振り向き様ににこりと笑う頼華の髪の色は徐々に真っ黒に戻っていく。男鹿とベル坊を除く周囲はただただ驚愕していた。
「あ、忠告。辰巳に用があるならあたしを通してね。」
語尾にハートでも付けそうな勢いで微笑む頼華。
「…だーーー!!!」
「頼華、」
「…あ、辰巳」
「お前、強かったんだな」
「…別に隠してたわけじゃないよ」
男鹿に嫌われたかな、と少し不安になったが、すぐにそれはないとわかった。
「…最高じゃねーか!!」
「…は?」
「強いとこも、弱いとこも好きだぜ?」
「…!ばか。」
「あの頼華ちゃんが…あんなに強かったのぉぉ!?」
「…やはり、そうであったか」
「ヒルダさん?」
「やはり、頼華もベルゼ様の母親だ」
「え、どういうこと?」
「…頼華をよく見てみろ」
「ん…えっ!!??」
制服越しではあるが、薄らと男鹿の腕にあるゼブルスペルと同じ模様が、頼華の場合は胸元に、浮かび上がっていた。
「坊っちゃまのかなりの魔力が流れ込んだだろうが…」
うむ、頼華はやはり最強の母親だなとヒルダはふ、と笑っていた。
「…なんで頼華にもゼブルスペル出来てんだぁぁぁぁ!」
「え?親だからでしょ?」
「…あっさりだな、頼華ちゃん」
「大切なひとがやられたら黙ってられない、それだけよ」
ね、ヒルダちゃんもだけど、とヒルダに笑いかける頼華にベル坊を預けて正解だったなと思うヒルダだった。
内に秘めたる強さ
(弱いだけだと思った彼女は)
(とんでもない強さを持っていた)
(だぁだー!あだ!!)
(ふふ、ベルちゃん)
(あー!!ダブ!!)
(喜びすぎだろベル坊)
(辰巳、)(あ?)
(だいすきだよ!!)
(!…あぁとーぜん)
End