第4章 無知という死病
イルミにそんなことも知らないの、と言われることは多い。
呆れたように溜め息を吐かれるのもセットで。
そして僕はいつも、知らないなぁと返すのだ。
僕は知らないことだらけだ。
かなりの世間知らずと言っても良い。
この世界で当たり前の事も、前の記憶が邪魔をしてすんなり受け入れられない。
実際に見たり体験すればちゃんと覚えれるんだろうけど。
「あ、」
「何?」
少し先を歩いていたイルミが振り返る。
「旅」
「は?」
そうだ旅に出よう
と、頭の中で文字が廻った。
「僕は一回旅に出るべきだと思う」
「必要ないでしょ」
キッパリと返されたので、此方もキッパリと言う。
「必要だよ」
「必要ないよ、お前は何も知らなくたって、オレと一緒にいれば良いんだから」
きっと、それは楽だろう。
僕だってずっと引きこもっていたい気持ちは強い。
「それじゃ駄目だよぉ」
せっかく真面目な顔をしていたのに。
むっとした顔をするイルミに、へにょっと困った顔をしてしまう。
「それじゃ、僕は駄目になっちゃう」
一人じゃ何も出来ない、何も考えられない、何にも気づけない、前の私のままになってしまう。
あんな終わり方はもうごめんだ。