• テキストサイズ

水際のテラル

第4章 無知という死病



イルミにそんなことも知らないの、と言われることは多い。
呆れたように溜め息を吐かれるのもセットで。
そして僕はいつも、知らないなぁと返すのだ。

僕は知らないことだらけだ。
かなりの世間知らずと言っても良い。
この世界で当たり前の事も、前の記憶が邪魔をしてすんなり受け入れられない。
実際に見たり体験すればちゃんと覚えれるんだろうけど。

「あ、」

「何?」

少し先を歩いていたイルミが振り返る。

「旅」

「は?」

そうだ旅に出よう
と、頭の中で文字が廻った。

「僕は一回旅に出るべきだと思う」

「必要ないでしょ」

キッパリと返されたので、此方もキッパリと言う。

「必要だよ」

「必要ないよ、お前は何も知らなくたって、オレと一緒にいれば良いんだから」

きっと、それは楽だろう。
僕だってずっと引きこもっていたい気持ちは強い。

「それじゃ駄目だよぉ」

せっかく真面目な顔をしていたのに。
むっとした顔をするイルミに、へにょっと困った顔をしてしまう。

「それじゃ、僕は駄目になっちゃう」

一人じゃ何も出来ない、何も考えられない、何にも気づけない、前の私のままになってしまう。




あんな終わり方はもうごめんだ。


/ 18ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp