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水際のテラル

第5章 出逢いは晴れのち嵐




sideジン


屈み込んでケージの中の小動物を撫でる指は、白くて細い。
どこか少女染みた横顔の、その瞳がいやに寂しげで、唇だけが綺麗な笑みを浮かべている。

ふにゃふにゃと笑って、暴力なんて知りませんって顔してるこいつが、暗殺一家の長子だと知ったのは、割りと知り合ってすぐで。思わず似合わねーって笑ってしまった。
こいつもこいつで、僕もそう思うなんて笑うもんだから、元々張っていない気が更に抜けたのを覚えている。

世間知らずでぼんやりしてて、何だか放っておいたら逆にめんどくさいことになりそうな予感がした。

期間限定の助手と言う名目で連れ回していると、思った以上に精神が幼い事が分かった。
そろそろ青年期に差し掛かりそうな時分だというのに、どこか上手く成長しきれていない。

身体の使い方は上手い、念もその歳にしては上出来と言って良い。
森での狩りや野宿は手慣れたものだし、流石と言うべきか生死観に関する辺りなぞは達観している。
人並みの優しさを持っていて、ちょっと流されやすくて、まあまあ良い奴だ。

それでも、人同士のコミュニケーションで顕著になる不安定さは、どうにも宜しくない。

触れると固まる身体。
しっかりと顔を見ているようで、けして目は合わない。
躊躇し言葉を飲み込む仕草を何度か見た。
ハルイ・ゾルディックという少年は、人に対する怯えが根底にあるようだった。


「かわいそーに」

ごわついている毛並みを撫でる手付きは優しい。
獲物である小動物は、己を食べると言うハルイに懐くように、クルクルと喉を鳴らした。

「でも、僕は君を食べちゃうんだよぉ
だって美味しそうだもの
食べてしまいたいくらい……可愛いから」

食べるということ、殺した命を食らうということ。
それを楽しみに生きる者も、忌避を覚える者も、知らぬまま為す者もいる。
当たり前のサイクルに意味を見い出してしまうのなら。

「お前、やっぱりハンターに向いてるよ」

「それは、どうなんだろぉね」

ハルイの手で、一息の内に絶命した小動物は、余すことなく糧になるだろう。
良い奴に食われたなぁなんて、茹だった頭で余計な事を考えた。

「ちょっと、手伝わないなら僕が全部食べるよ」

「あー待て待て、手伝うって!」


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