第5章 出逢いは晴れのち嵐
まずはハンター試験を受けようと思う。
ライセンスの有無でかなり自由度が変わってくるのはジンを見て理解した。
僕が出来ないこともジンは出来る。能力的な話ではなく、法的に許されているという一種のアドバンテージ。
暗殺者という一見治外法権のような職業に就いていたとしても、無為な争いは避けられるに越したことはない。
無駄で無意味な殺しは無用な怨みを買う愚かな行為である、と爺様も言っていた。怨みは死を連れてくるものだ。
とまあ物騒な言葉を並べているが、ようは商売を長く続けるためにはリスクマネジメントが必要というだけの話。
そして色々な許可や資格を取るよりもハンターになるのが手っ取り早い。
「ねぇジン」
「あ?」
ジンは此方を見ることもなく、珍しい植物を検分している。
「最短でハンターライセンスを貰うにはどうすれば良いかなぁ?」
「試験を受けるしかないな」
にべもない返答。スケッチブックを投げ出して転げ回ってやりたい衝動を抑えてペンを握り直した。
ちょっとだけペンから軋んだ音が鳴ったけど、気にせずに写生を続ける。
口を動かしても良いが手を休めると怒られるんだ。
「そぉだけど、期間長すぎてやってらんないよねぇ」
何日も、下手したら一月くらい費やすかもしれないのだ。
それくらい危険で慎重に行うべき試験ということなのだろうが、やはりどうしても面倒くさいという気持ちが拭えない。
「時間的な意味の最短なら一つだけ方法を知ってるが」
「え」
ぱっと顔を上げた先。ニヤニヤ笑うジンの表情で、きっとろくな方法ではないんだろうなと察する。
「まあ試験官にもよるし、お勧めは出来ないがな」
とりあえず今はちゃんと描け、と言われて紙に目線を落とした。