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水際のテラル

第5章 出逢いは晴れのち嵐



家を出てからはとりあえず当てなく歩いた。
何だかんだ仕事以外で、国外に出るのは初めてかもしれない。
飛行船や船に乗る事数度、やがてカキン国へ着きその奥地の森へ入った。

今は6月始めといった所で濃い緑が広がっている。
見知らぬ生き物が沢山いて、こちらに対する反応も様々。
刺激しすぎないように絶をしてあちこち歩く。

少し拓けた場所に出た。
ここらは生き物が極端に少ない。
辺りを見渡して周りの木に先端のみ鮮やかな赤に染まった草が生えていることに気付いた。
これは家でも使うことのある。

「毒草、だねぇ」

毒草を摘んで匂いを嗅ぐ。
この草は他の木に寄生しているもので、神経毒として用いられる事が多い。
煎じてしまうのが一番効果的だが、匂いだけでも結構神経をやられるので、この草の付近には生き物はあまり近づかない。
野宿には丁度良いスポットだろう
毒性は家にあるものよりも少し強いかも。
生育環境の差かもしれない。
ノートに書き留めておく。
名前は思い出せないから簡単なイラストを添えておいた。

「それからこの側にはー」

ガサガサと根本付近の茂みを探ると、小さい赤い実がなっている。

「これ甘くて美味しいんだよぉ」

ぷちっとした皮の中に熟した桃のようなとろっとした果肉が詰まっている。
味は桃よりも苺と林檎を混ぜたジュースみたいな味がする。

「んー……」

違和感がして視線を下ろす。
実に伸ばしていたのとは反対の手に蛇が噛みついていた。
そういえば忘れてたなぁ。
この実はこいつの好物だった。

「おい、死ぬぞ」

「んん?」

背後から伸びてきた大きいゴツい手が蛇を掴む。

「これは毒蛇だ」

黒髪で活発そうな男が眉をひそめて此方を見ていた。
念能力者だ、かなり強い。

めんどくさがって円を怠っていたのを知られればイルミに怒られるかも。
だってこんな奥地に人が居るなんて思わないじゃん、と心の中で言い訳をする。

「ああ、大丈夫、死ぬのはこいつだしぃ」

「はあ?ってうお?!」

男の手の中で悶え苦しむ蛇をナイフで裂く。

「こいつあんまり美味しくないんだけどなぁ」

今日のご飯は蛇かぁ。

「お前、何をした?毒でも仕込んでんのか?」

「ああ、毒を常食してるから血肉に毒が溶け込んでるんだよ」

食べる?と蛇を指差し聞くと「おう!」と元気の良い返事が返ってきた。
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