【弱ペダ/荒北靖友】フライデー・ナイト・マックイーン
第1章 第1話
私の姓が荒北に変わって、まだ半年も経っていない。その時間だけ見れば、確かに、私は井上くんの言うとおり「新婚さん」に該当するのだろう。ただ、そういう自覚が私自身に欠けているというだけだ。そしておそらくは、夫にもその自覚はない。
彼、荒北靖友と出会ったのは大学時代になる。同じ大学とは言え、私は文学部、彼は工学部だった。サークルもまったく異なる。そんな私たちがどこで出会ったのかと言えば――と言っても別にこれはロマンチックな話でもなんでもないのだけれど、一年次の一般教養の授業で、だ。
一般教養の単位の取得にあたっては、環境・ジェンダーに関わる単位を一つは取ることというのが全学的な条件となっていて、私たちが選んだのは後者のほうだった。ジェンダー関係の講義は確かその年の前期で二つあって、欠席数は問わないがレポートの提出と試験のパスが求められるもの、あるいはグループワーク形式で作業し期末に発表を行いその評価で成績が決まるものの二種どちらか。
私と荒北くんは、後者のグループワークがきっかけで出会ったのだった。
作業班は学生番号順に勝手に振り分けられ、私たちの班は全員同学年の男女で五人。学部はバラけていて、私と同じ文学部はもう一人、あとは法学部と経済学部がいたように覚えている。グループワークのテーマは共通していて、「結婚とセックス」。教授が特に表情も変えずセックスと連呼するのが、当時十八歳だった私たちにはやや衝撃だった。
荒北くんとはじめて会話らしい会話をしたのは、授業中ではなく、その日の夜に行った飲み会の場でだった。確か法学部の男子だったと思うのだけれど、「せっかくだし、このグループで一度飲みに行こうよ。発表の相談も兼ねて」なんて言い出したのだ。未成年云々はここでは置いておくこととして。
大学のすぐ側にある居酒屋では、テーマがテーマだから、アルコールが入ってくるにつれ、なかなかきわどい話も出た。しかも私の勘が正しければ、言い出しっぺの法学部と、経済の女子は多分その日の夜にセックスをした。まあそれはともかく、午後十一時ごろにふとしたきっかけでしたのがこんな話だ。
「逆に言えばさ、セックスのない結婚って、アリ? ナシ?」