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【弱ペダ/荒北靖友】フライデー・ナイト・マックイーン

第1章 第1話


「じゃ、いただきます」
「いただきまーす」
 他人に話したことはないけれど、私たちの結婚に際しては、互いに話し合って決めた「契約」がいくつかある。そのうちのひとつ、「出来る限り夕食はいっしょにとること」。今のところ契約は順調に履行されている。
「ね、今日も鳴子くんのFacebook、更新されてたね」
「マメなんだよなァ。小野田チャンもかなりマメだけど」
「え、小野田くんもFacebookやってるんだ」
「たいていやってんヨ。福チャンは更新止まってるけど」
「あー、それっぽい」
 俺のページから辿ってみなヨ、と言われ、うんと答えた。実行する確立は6割くらいだ。
「明日は休み?」
「休み。明後日は仕事」
「じゃ、今日は夜更かししようヨ。映画借りてきたから」
「TSUTAYA?」
「TSUTAYA。今安いから」
「あー、見た見た、メルマガ。何借りたの?」
「『大脱走』と『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』。どっちにする?」
「大脱走。マックイーン見たい」
「じゃ、風呂入ってからネ」
 映画の趣味は、私たちの然程多くはない共通点のひとつだ。だから、私たちはよく一緒に映画を見る。セックスをするかわりに。愛を囁くかわりに。ソファで隣に座り、コーヒーを飲みながら、照明を落として、映画を見るのだ。
 そして、時々手を繋ぐ。
 十八歳の頃の結婚観を一切変わりなく持っているなんてことは私にも荒北くんにも有り得ないことなのだけれど、それでも、こうして私たちは一風変わった結婚の形を信じている。あのとき、「俺もアリ派」と言った、荒北くんの顔を忘れられない。居酒屋の、気取ったオレンジの照明の下で、彼はモスコミュールを片手にうっすらと笑っていた。
 多分、私たちは普通ではない。社会的観念から逸れた結婚をして、おそらくセクシュアリティも一般的なそれではないのだろう。けれど、愛し合っている。そして、愛を信じている。
 その日、手をつないでマックイーンを見ながら、私たちは少し眠った。
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