第1章 波乱の幕開け
「ふぅ……。とりあえず休憩しよ……。」
そう言って私はベッドに倒れ込んだ。
……朝から休憩無しに移動して荷物を整理していたので疲れがドッときたようだ。
「いづみちゃん、久々に会ったけど可愛かったな。
男ばっかりの役者の監督になったって聞いて、本当に焦ったけど特にいづみちゃんに好意を持ってるような人はさっきの雰囲気では見受けられなかったし……。多分、大丈夫だよね。いづみちゃん、ちゃんとジーパンも履いてガード固いし。」
私は携帯の画面を開く。そこには昔、いづみちゃんと入ったプールの写真が待ち受けにしてある。
「いづみちゃん、本当に可愛い……。水着もいいなあ。」
私は気が抜けていたのだろう。
部屋に人が入ってきたことも、背後に立っていたことも気づかなかった。
「…………へぇ。アンタ、やっぱり監督のことそーゆー意味で好きなんだ。」
バッと後ろを見ると、真澄くんが立っていた。
「い、いつからいたの……!?」
動揺で声が裏返る。
「アンタが『いづみちゃん、久々に会ったけど可愛い』って声が聞こえたから覗いたら、変な写真みてたから。」
「さ、最初から見てたの……?」
……ヤバい。これがバレるのは本当に本当にマズい。
私は咄嗟に真澄くんの手を掴んで言った。
「お願い、いづみちゃんには絶対言わないで……!!
何でもするから!!」
多少高価なものをねだられても仕方ない。
バレるより断然マシだ。高校生なら値段的に買えないものもあるし、効果的だろう。
そう思って真澄くんの顔をみると、彼はふっと微笑んだ。
「………へぇ。何でもするんだ。」
じゃあ、と言って真澄くんは私の両腕を掴んだ。
「………俺の好きにして、いい?」