第1章 波乱の幕開け
通された談話室で待っていると、見慣れた人物が入っていた。
「ももちゃん!!!会いたかった~!」
「いづみちゃん……!!!」
私に抱きついてきたのは立花いづみちゃん。
私の大事で………言えないけど、私が密かに思いを寄せている大好きな従兄弟。
「無事辿り着けたみたいで良かった!今日夏組の稽古だったから、迎えに行けなくてごめんね!!」
「大丈夫だよ、心配しすぎ笑」
いづみちゃんは優しいな……。
そう思いながらも彼女が抱きついてきてくれた事に嬉しくて頬が赤くなるのがわかる。
「あれ?ももちゃんほっぺ赤いよ?」
「な、何でもないよ!!」
危ない危ない。……こんな感情、死んでもいづみちゃんにはバレたくない。私の中で、思ってるだけでいいんだから。
「稽古も終わったし、早速今いるメンバーだけにでも紹介しよっか!」
そう言っていづみちゃんは部屋を出ていった。
(はあ………。本当にいづみちゃん、大好き。)
その思いは口に漏れていたようだ。
ガチャッ。
扉が開いて、“彼“が入ってきた。
「…………今、監督の名前が聞こえたんだけど。……アンタ、誰。」
高校生くらいの男の子だろうか。
いや、それよりも聞かれた……!?
焦っている私を後目に、“彼”はソファーに座った。
「もう一回聞く。……アンタ、誰?」
いづみちゃんの名前を読んでいたことはそんなに気にしていないようだ。
「私、立花もも。いづみちゃんの従兄弟なの。今日からこの寮にお世話になりにきたの。よろしくね。」
「……ふーん。……俺は碓氷真澄。」
碓氷真澄と名乗った彼は大して興味がない、と言ったふうに雑誌を読み始めた。
(なんか、変わった子だな……。)
不穏な空気も無く、そんな感じで彼とは出会った。……いや、後となっては出会ってしまったと言うべきだったんだろう……。