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彼に食ってかかられる

第39章 恋人たちになりたくて


「叶さん?」


辿り着いたのは僕の部屋。
焦燥感からか鼓動の音がやけに早い。

扉を開けると、



「うっ!?」

「…いた。」



──明かりを点ける。すぐそこには、慌てふためき出す叶さんがいた。
少し入ったところの床に座り込んでいたんだけど、余程びっくりしたのか、目を白黒させてこちらを見上げる。


──ずっと起きて待っててくれたのかな…

そう思うと、何から労いの言葉をかければいいのかわからないけど、とりあえず。



「……叶さん、遅くなって、」

「!えほんっ、おほんっ、っ、ぐっ…!」



「え?は?何ですか?」

「ちょ、ちょ、んぐぅ、待って…」



我慢が出来なくなったのか、間抜け染みた声に混じって苦しそうな喘ぎ声を漏らし、胸の辺りを叩き出す。

弾かれたように、慌てて叶さんの元にしゃがみこみ、丸まっている背中を擦る。



「叶さんっ?」

「んっ…!」

「ちょっと…どうしたんですか?」





しばらくして、ぐっ、と喉が鳴ったかと思うと、叶さんは涙目で荒い呼吸を何度も行い出した。



「はー…はー…!!」

「だ…大丈夫ですか…?」



こちらを見上げる瞳。

とりあえず治まったようで次第にほっとしていく。安心した僕は叶さんを抱きしめていた。



「わっ…え、えっと…!」

「もう…驚かせないでください…」

「ご、ごめん…」

「待つことぐらい普通にできないんですか、あなたって人は…」

「う…ん…」



でも、責め立てたい気持ちや問い質したいなんて気持ちは毛頭もなく。

抱きしめながらその背中を優しく撫でていると、叶さんもようやく落ち着いたのか僕の肩口にそっと寄せられるおでこ。
そして、おずおずと、控えめに僕の背中に回される腕。



「…落ち着きましたか…?」

「うん…」

「……帰りを待っててくれたんですか。」

「うん…待ち切れなくなって…」

「そうですか…」

「それで…退屈になっちゃって…ういろう食べてた…」


「……え。もしかして。」

「……」

「もしかしてさっき、ういろう喉に詰まらせてたんですか?」

「……」
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