第57章 【七夕のお話】満天の星に祈る
そんな宗次郎の言葉に叶が素直に引き下がるはずもなく。じりじりと宗次郎に詰め寄っていく。
「何隠したの?」
「別に、何も隠してませんけど。」
「嘘だ、腕の下に何かを隠し持っている!」
「なんでこういう時だけ目ざといんですか。」
「……はっ、もしや私の頭が治りますようにとか…?」
「それは一理ありますね。」
「やっぱり短冊書いたんじゃん。見ーせーてー!」
「…もう、わかりましたよ。」
はあ、と溜め息を溢して宗次郎は隠した短冊を取り出すと叶の目の前に晒す。
それを見て刹那、叶は瞬きを繰り返すのであった。
「…宗次郎、これ…」
「……」
「本当に…?」
「…願い事と聞いて、何かあるかなぁと暫く考えてみたんですけど、本当にそれしか思い浮かばなくて…」
宗次郎はふいと目を逸らして告げる。
「でも、叶さんのお願い事見て、なんか場違いなこと書いてしまったんだと恥ずかしくなって…。まあ、叶さんはそうじゃなかったんだ、と落胆する気持ちも少しありましたけど…」
「…いい。」
「え?」
「いいと思う!何より嬉しい!…そして、ごめん!私が馬鹿だった!」
「えっ?ちょっと叶さん?」
「七夕にはこういうお願い事していいの!」
戸惑う宗次郎の腕を掴んで、真正面から肯定する。
「…私も、宗次郎と同じ願い事書く。」
「えっ…」
「宗次郎可愛すぎかよ…もう私が宗次郎を幸せにします!…出来る限り。」
「…そこは最後まで保証してくださいよ。」
勢いに任せて力んで、でも語尾に約束の実現に対しての、少しの不安を滲ませた叶に宗次郎は嬉しそうに笑いかけた。
(これからも、叶さんとずっと一緒にいられますように。)
張『姐さん、鎌足、何しとんのや?』
鎌『今いいところなのよ~♪』
由『あの子達ナチュラルにすごいこと言うわよねー!』