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彼に食ってかかられる

第36章 どっちもどっち


「宗次郎ー?」



宗次郎の部屋を訪れるも、姿が見当たらず。
「あれー?」と叶は首を傾げた。



「おっかしいなぁ…帰ってきたならここにいるかと思ったんだけどなぁ。」



今一度部屋を見渡してみても、宗次郎の姿はなかった。



「おやつでも買いに行ったのかな。…よーし、悪い宗の坊やにはお仕置きだべ。」



別に腹を立てたわけではないのだが、暇を持て余した叶は宗次郎の机に向かい、ごそごそと仕込みを行うのであった…。



「…さて。これでよし♪」



それじゃあ由美さんや志々雄さんに遊んでもらおう、と叶は部屋を後にするのであった。




(…でも本当にどこに行ったんだろう?また志々雄さんに何か頼まれたのかなぁ。何か私に手伝えることがあればいいんだけど…。)


回廊を進みながら一人考えを巡らせる叶であったが、あることを考えた瞬間にふと足を止めていた。



(もしや、浮気とか…!?)



しかし、即座に打ち消す。


(いやいやいや、そんなそんな…。このちんちくりんを好きって言ってくれるような人がそんなことするわけないじゃん、ハンッ。まあ、好きだなんて言われてないけどねっ。)



しかし。


(…でもさ、でもさ。それは許容範囲が広いってなわけで。じゃあどんな人も範囲に入るのでは?…てか、私じゃ物足りないのでは…)



しかし。


(いやいや。人を疑うのは良くない良くない。そんなわけないじゃない。)



しかし。


(でもなぁ…人の心の隙や油断を突いてしばいてくる奴だからなぁ…)



しかし。


(うん!きっとおつかいかお散歩かおやつに違いない!決定!)



るんたった♪と軽やかに歩き出した叶であった。







* * * * *



ガチャ!


「由美さーん♪いるー?」



大広間に到着した叶は勢いよく扉を開けた。



「もし暇だったら遊んで──」


ぴたりと叶の動きが止まった。



「あ…」

「あら。」



広間に置かれたソファには腰掛ける由美と。由美の膝元に頭を預けた体勢で寝そべる宗次郎がいた。
ちょうど宗次郎の顔は外側を向いていて。入ってきた叶と目を合わせたのだった。
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