第35章 きらめき雨もよう
「…ほら、叶さん無駄に強がるから。みっともない。」
「そ、宗次郎だってなんか格好つけるから。もはや濡れ鼠じゃん。」
「その言葉そっくり返します。」
「じゃあ泥付けて返します!」
「ぬかるみに叩きつけますよ?」
「ごめんなさい!」
勢い任せなやり取りをしながらどこかほっとしていたのは、叶さんには内緒。
ころころ変わる表情のどれであっても、見る度に惹かれたり動揺したり内心そうやって揺れ動かされてしまうのも、叶さんには内緒。
傘を持つ彼女を前に、そっと心にしまい込んだ。
「…仕方ないですねー。」
「!」
少し屈んで、叶さんの隣、傘の下へ入った。
今更雨を避けたって少し手遅れだけど。でも、叶さんの顔がほのかに明るくなったのを視線の隅で見つけていた。
──もう揚げ足を取るのはやめにしておこうか。傘の柄を持つ叶さんの手に己の手をそっと重ねた。
「…じゃ、一緒に行きますか。」
「…はーい。」
きらめき雨もよう
(あ。虹!綺麗だねー!)
(…ほらね。)
(え?なに?)
(別に、なんでも。)