第34章 【バレンタイン話】糖度は控えめ?
宗次郎は少し視線を泳がせた後、次第に口元を覆い隠す。そして…熱に浮かされるような表情を叶に向けた。
「…叶さん。」
「は、はい?」
「…なんでそんなに健気なんですか…//」
「はい??」
「ああもう、自覚ないでしょ…質が悪いなぁ。」
少し乱されたように言葉を放ち、叶を見つめる。
「叶さん…」
「うん。」
「今年は本命ですか?」
「!…さ、さあ?//」
「……ねえ、叶さん。」
「なに…っ?」
言葉が出なくなる。歩み寄った宗次郎は距離を詰めて手を伸ばす。そのまま頰に触れる暖かい手のひら。
「そ、宗次郎…」
「なんです?」
「…あ、あの、私まだそういうのに耐性がっ…//」
「だーめ。目を逸らさないでください。」
ふふ、と微笑みを向けられる。
──天使かよ、と叶は内心呟きながらも胸を高鳴らせてしまう。
「…かわいい。」
「!」
ぼぼぼ、と頬が一気に熱を帯びる。
「っ、…な、何言って…//」
「…早くください。本命を。」
ぎゅうっと、包まれる。
──暖かい彼の腕の中。
「ふ、えっ…」
「待ちきれないです…」
至近距離で見る宗次郎の頰は赤く染まっていて。そして耳元で囁かれた甘い声に叶は素直に頷いた。
「…うん…わかった…//」
心地良くてもどかしい想いを胸に。
彼の身体を抱きしめ返した。
糖度は控えめ?
(いえ糖度は満点、甘さたっぷりです。)
『宗次郎、はい!ハッピーバレンタインデー!』
『ありがとうございます。』
ぱかっ。
『……』
『今年はね!ガトーショコラに挑戦してみました!』
『(……木炭かと思った……)』