第34章 【バレンタイン話】糖度は控えめ?
とある茶屋にて叶と対面していた操は素っ頓狂な声を上げた。
「え?叶チョコレートあげないの!?」
「うーんと…そうなるかな…?」
「なんでそうなるのよォ!?」
机をバンバンと叩く操を前に叶はしどろもどろと口を開く。
「…えーとまあ至極当然で…料理が下手くそだからです。」
「はあ!?」
「何度も言わせないで!私は料理が下手なの!」
「いや聞き取れなくての“はぁ?”じゃないから。」
「…だってね?操ちゃん聞いてくれる?去年あげたのよ。その時は友チョコっていうのかな、本命じゃなかったんだけど。」
「うん。」
「トリュフ作ったの。」
「うんうん。」
「……あげたチョコ見てなんて言ったと思う?」
『はい、宗次郎!バレンタインデー!』
『あ。ありがとうございます。』
『義理ですけど。』
『わかってますよ。本命だなんて言われたらどうすればいいんですか。僕の身にもなってくださいよ。』
『どういう意味?素直に“チョコレートだぁ嬉しいなぁ”とか言やいいのに。』
『気が利かなくてすみません。まさか叶さんが人間の習わしを知ってるだなんて思いませんでしたから。』
『ちくしょう、あげなきゃよかった。』
「……叶、本当に付き合ってるの?」
「い、今はちゃんと…!っ、こ、こいびとですっ。」
「よっぽどの意地悪なのか、それとも叶がよっぽどの鈍感だったのか…。まー、今はもう恋人同士なんだから大丈夫だって♪」
「いや、今話したのは序の口。」
「え?」
『え?これなんですか?』
──箱を開けた宗次郎の言葉。
『チョコって言ったじゃない。バレンタインデーにチョコ以外に何があるっていうわけ?』
『……蓑虫入ってるんですけど。』
「……え、叶。蓑虫プレゼントしたの?」
「なわけないじゃない!!トリュフ!トリュフだってば!」
「蓑虫に寄せたトリュフ…?」
「なんで蓑虫に寄せなきゃいけないのっ。そういう嫌がらせもありかもしれないけど、私は純粋な好意で渡したわけで!」
「嫌がらせって何!?かー…そうか、叶料理オンチなのかぁ。」
「だから…あげないもん。どうせ美味しくもないし。」