第31章 愛しさ、つかまえた
「え…?あの、これは…?」
「…行かないで。」
か細い声。
「でも叶さん、休まないと…」
「…もっと一緒にいたいの…」
「…えっ、でも…っ…」
予期せぬ展開と、何より叶の悩ましげな様子に宗次郎の思考は揺り動かされる。
「こうしていたいの…//」
「……!」
「……宗次郎は嫌?」
少し身体を離す叶。ようやく見えたその顔は、いてもたってもいられないという表情で殆ど埋め尽くされていて。
──あとは、僅かな不安の気持ちと。
宗次郎はその不安を拭うように、ゆっくりと叶の身体を抱きしめた。腕に伝わる叶の柔らかさとぬくもりに、宗次郎は顔が火照り出しそうになる感覚を覚える。
「……嫌なわけがないでしょう…?」
「…そっか…」
「……そういうものですよ。心配しなくても。」
「…そう、よかった…//」
再び顔を合わせると、今更恥ずかしくなってきたのか、紅く染め上がる彼女の頰。
宗次郎は思わず笑みを溢しながら、その頭を痛くないように小突いた。
「…っ?」
「馬鹿ですね…今さら何を照れてるんですか。」
「だ、だって…」
「…仕掛けたのはそちらのくせに…」
静かな呟きに叶#の頬はますます熱を帯びていく。けれど宗次郎はそのまま彼女に囁き続けた。
「僕だって…叶さんに触れたい、ずっとこうしていたっていい。そう思っているんですから…//」
「…そ、そうなんだ…?」
「だから……離せないですよ?」
「……!」
とさ、と布団に静かに横たえられる。
一瞬離れたぬくもり。けれどすぐに再び近付いていく。宗次郎は覆い被さるように、叶の頭の横に手を突き顔を寄せた。
「叶さんが煽ったんだから…」
「……だって。ドキドキさせてくる宗次郎が悪いんだもん…//」
「はいはい。」
視界が狭くなり──彼に優しく抱きしめられた。
「僕が悪いです。だから──満足してくださいね?」
愛しさ、つかまえた
(今はもうおやすみ。君は僕のものだから。)