第31章 愛しさ、つかまえた
横たえられた身体。すぐ隣で宗次郎が穏やかに見守ってくれている。
…繋がれた手が熱い。
「宗次郎…」
「…眠たくなってきました?」
宗次郎の淹れてくれた……
あたたかい紅茶の味はまだ口に残ったまま。日だまりの中にいるような感覚にまどろみながら、彼の名前を呼んだ。
「なんだか色々あったからかな…どっと疲れた。」
「普段叶さん仕事しないですもんね。無理ありませんよ。」
「ちゃんと仕事することあります!人並みには体力備えています!」
減らず口を叩くと、にこにこと優しい笑みを向けられた。
──いつもの宗次郎だ。でも、いつにもまして…何やら胸の鼓動が激しくなる。
「……叶さん?」
「……手が心地いいの……」
「…そうですか。」
──高まる気持ちを落ち着かせるべく。
存在を確かめるように、繋がりを噛みしめるように何度も彼の手を握り返し、叶は目を瞑った。
このまま…夢のようなひとときから醒めなければいいのに。
(…そろそろ…僕はこれで。)
──叶の遠のきかけていた意識がその気配を刹那捉える。
宗次郎はゆっくりと繋がった手を離し、立ち去ろうと……
「……っ……」
叶は思わず、手を伸ばした。
「えっ…?叶さん…?」
突然のことに宗次郎は目を見開いた。
触れた体温…そして寄り掛かられる甘やかな重みに身体の重心を傾けさせられる。
──肩に回された腕。叶に身を寄せられていた。