• テキストサイズ

彼に食ってかかられる

第30章 夢なら醒めないで


「四十秒で支度する!待ってな!」

「四十秒は遅くないですか?」

「うるさい。」




まったく、宗次郎も何かと世話が焼けるなぁ。え?私は?……放っといてください。


適当な着物を見繕って抱えて、宗次郎のところへ──そのまま私は足を滑らせた。



「うわっ、とぉ!!?」



「──わあ、さすが僕の運動神経。よく倒れずに持ちこたえましたね。」

「私のことは褒めないの?」

「むしろ逆です。僕の声で変な声出さないでください。」

「はいはい、そうですかー。

……あ、目隠しないや。取ってくるね。」




目隠しの布を取りに箪笥を物色し、手にして再び宗次郎の元へ──そのまま私はまた足を滑らせた。


「きゃあーーっ!!?」

「ああもう、何やってるんですか…」



先ほどと同じく片足を出して踏ん張ろうとしたものの…奇跡はおいそれとは起きないようで。今度はその足もまた、ずるっと滑った…



「「あ。」」



最後に見たのは、こちらに駆け出す私…ううん、宗次郎の姿で。
抱き止められたと思ったところで、強い衝撃が頭に走った──







  
──叶さん。


(宗次郎…?)



「叶さん。」

「……あ、宗次郎。」



ぼんやりと視界の中心にいたのは、宗次郎だった。ゆっくりと瞳を開いていくと、それははっきりと宗次郎の輪郭を映し出した。


「よかったあ、気付いて。大丈夫ですか?」

「うーん…うわ、たんこぶ出来てる!」

「あー…痛そうですね。僕もこの辺りに…」

「あっ、痛そう…」



互いにおでこを見合わせていて、宗次郎ははっとした表情をした。ほぼ同時に、同じくして私もはっとした。



「…戻ってる…?」


「戻ってますね…?」



揃ってぱちぱちと瞬きを繰り返す二人。




「やった……っ、くしゅん!」

「あ。」

「寒い…あ、そっか、私がびしょびしょなのか。」



忘れてた。
/ 145ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp