第29章 触れたぬくもり
お風呂場でつい、と微笑みかけた宗次郎。でも大丈夫ですからと続ける彼になんだか申し訳ない気持ちがこみ上げてくる。
「どうして着替えなかったの?風邪引いちゃうよ…?」
「んー…まあいいじゃないですか。」
少しだけ目を逸らして言葉を濁した宗次郎。…合点がいった。
「私の身体見ないように気を遣って…?」
「…いえそんな大層な。別に、そんなに大して気を遣ったわけじゃないですから。」
「ごめん、貧相な身体に気遣わせて。」
「……(何かと気にするんだなぁ…気にしないでいいのに。)」
「冷えてない?大丈夫?」
「大丈夫です。
………あれ?なんだかちょっと寒くなってきたかも。」
「!いやー!それって風邪引き始めてるんじゃ…!?」
「くしゅんっ。」
「あーあーあー!言わんこっちゃない!」
寝ていられるわけもなく、私は着替えを取りに箪笥へ向かって駆け出した。
「あ、どこ行くんですか。寝ててくださいよ。」
「いいの!四十秒で支度しな!…あ、間違えた。支度するのは私か。四十秒で支度する!待ってな!」
「四十秒は遅くないですか?」
「うるさい。」
触れたぬくもり