第5章 乙女の悩み
「ねえ、宗次郎。」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…なんか答えてほしいんですけど。」
「嫌です。」
「…えっ、なに?こんだけ溜めておいて?」
「面倒は御免ですよ。」
「いいじゃない、教えてくれたって。」
ぶーぶー言うと呆れたような、馬鹿にしたような視線を向けられた。
「成果も出せないようなあなたに稽古をつけたって無駄だと思いませんか。」
「まだ何もやってないじゃん。なんで成果出ないって決め付けるんですか。」
「勘です。」
「勘かよ。そうか宗次郎、教えるの下手なんだねー。そっかそっか。」
「なんで教えてないのにわかるんです。」
「女の勘よ。」
「叶さんの勘ほど充てにならないものはないですね。」
「ふんだ。ケチ。」
…幼稚だなぁ。もう少し理知的というか、そういう言葉は出ないんですか。
膨れっ面したかと思うとそっぽ向いてますね。
そもそも何の戦闘も、と言いますか、普段運動すらしない体力皆無のお嬢さんがいきなり稽古なんて無理ですよ。
…でもなあ。
「どうして稽古なんて申し出たんです?」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…叶さん?」
「………だって私、弱いし…志々雄さんの力になれない…」
あ、ダメだ…。私ったら、なぜか本気モードのスイッチが入ってしまったみたい。
だって、気にしてるんだもん…!
あーどうしよう、気まずい。思わず顔下向けたけど、どんな顔して向き直ったらいいの。
いくら宗次郎でもこんな空気にしちゃったら気まずいよね…