第4章 ほんの出来心
つい、で一箱16個丸々平らげたんですか。…言葉が出ません。
「っ、ごめんなさい…っ…」
「!」
「…っ…」
…なんですか、らしくない。急に押し黙って。
なぜ下を向くんですか。何を震えているんですか。
同情を得られる相手ではないとわかってるはずだけどなあ。
……まあ興味本位で聞いてあげてもいっか。
「…叶さ」
「ぷっくくくく…!」
「?」
「ご、ごめん宗次郎…状況想像したらおかしくって…!」
「…」
「だって、間を置いてのありがとうよ、って…志々雄さんきっと気遣ってくれて、ぷははっ…!」
…ああ、なんで志々雄さんはこの人がお気に入りなんだろう。いくら志々雄さんといえども、気が知れないや。
どこをどう探したら、こんな珍奇な子を見つけられるんだろう。
そして何をどう見れば、この子の良さがわかるんだろう…
「もういいです、叶さんにはほとほと愛想が尽きました。」
「いや、ほんとにごめん。…ふふふっ、これ駄目だ暫く…」
ああ、非常に疲れるなぁ…。
この人は本当に面倒ですね。四六時中酔っ払ってでもいるんでしょうか。
…ひとつ言えるのは、この人におみやげなんて買う必要はなかったなあ。
…まあいいや、どうでも。
「叶さん。」
「はい?」
「一ヶ月間餌抜きで。頑張ってください。」
「ええ!?いや、それはさすがに死んじゃう、…?これは?」
「…おみやげです。それで凌いでください。」
「え…いいの?ありがとう!」
「…感謝って行為ご存知だったんですね。」
「馬鹿にしすぎですよ。…綺麗!これは蜻蛉玉?」
「ええ。ちょっとした気まぐれですけど。」
「嬉しい、宗次郎ありがとう。」
…数々の行い、決して帳消しにはできませんが、悪くはないですね。
その後、すごく感激してる顔が面白くて眺めていたけど、途中ふと目が合ってしまい、なんとなく額を小突いておきました。
まあ、いいかこれくらい。