第21章 惚れた腫れたなんか

意識を取り戻した叶はワナワナと震える。
そのまま勢いづいて宗次郎に殴りかかるも、横抱きにされてしまう。



「わあっ！？」

「やっと起きたんですね。早いとこ部屋片付けちゃってください。ちゃんと部屋の空気も換気するんですよ。」

「だーっ、こら！離して！」

「それから罰として報告書書くの手伝ってください。それといつもの倍の仕事を言いつけますから、それにもすぐ取り掛かってください。」

「え？何言ってんの！？意味不明なんだけど。」



「早くしないとピーーー(自粛)ーーーしちゃいますよ？」


「！！？？……はあっ！？///」



爽やかな笑顔を向けられるものの、耳にした言葉に思わず沸騰しそうになる叶であった。







「…ねぇ由美さん。」


死んだ魚のような目のまま鎌足が口を開く。


「…なに、鎌足。」


由美も死んだ魚のような目のまま問いかけに反応する。



「あの笑顔はさ…照れ隠しなわけ？」

「……」

「あの態度も要するに…照れ隠しなわけ？宗ちゃん超が付くほどのツンデレなわけ？」

「……私もそう思っていたところ。」



二人の呟きもよそに、叶は宗次郎に抱えられて仕事に就きましたとさ。








惚れた腫れたなんか


果たして、本当のところは…？






＊　＊　＊　＊　＊




『叶さん、これお土産です。』

『え？わあっ！すごくかわいい簪！！ありがとう！』

『いいえ。』

『…あれ、宗次郎？顔赤くない？大丈夫？』

『なんでもないです。叶さんには関係ありません。』

『かわいくないなーもう。』



ぶつぶつと呟きながらも、嬉しそうな笑顔を見せる叶をちらり、と見ながら宗次郎は心の中で思った。



(好き…か。恥ずかしくて口が避けても言えないや。)