第20章 三度目の正直
「それならもう…教えてあげます。」
「……」
「…鈍い叶さんの頭に合わせてあげます。わかるように。」
「宗次郎…私…」
…わからない、宗次郎が一体何を考えてるのか。
──でも、私と一緒で…素直になるのが気恥ずかしいだけ。そんな気がした。
…このまま知らなければ。
私達は今までと同じ…食って掛かられて弄られてけなし合って。でも、互いに心の片隅では、互いのことちゃんと思い遣ってて。──私は本当は、宗次郎が優しい奴だって知ってるから。
腹が立つことはあるけど、かけがえのない存在同士…
そのままの関係であり続けることだって、楽しくて幸せなことだけど…
以前…一緒に帰り道についた時の宗次郎の姿を思い出す。
不機嫌なような、困ったような…
もどかしそうで、何か言いたげな…そんな表情を浮かべていたのが、いつまでも印象に残っていた。
──宗次郎は、今も…待ってくれてるのかな…?
追いかけたら、手を引いてくれるのかな…?心から微笑んで…
叶は暫し俯いていたが、やがて気持ちを固めたようにゆっくりと彼を見上げた。
「うん。知りたい。…それで…」
「……」
宗次郎の着物の裾を握りしめる。
…このまま、投げ出したくない。本当の宗次郎の気持ち、見失いたくない。
受け止めたいからこそ、本音を明かさなきゃ。
──だって…多分、私……
「宗次郎のことも、ちゃんと知りたい。」
透き通った瞳に宗次郎は応えるように微笑む。そしてもう一度、叶を真正面から見据えた。
「…二言はないですね?」
「う、うん。」
「じゃあ、」
宗次郎は少し頬を赤らめ…
一瞬伏し目がちになりながらも、意を決したようにもう一度叶を見つめて、告げた。
「…キスしてもいいですか?」
躊躇いがちに、だけど抑えきれない思いが溢れるように伝えられた言葉。
「……!//」
「……もう、わかったでしょう?」
照れたように、でも手放すまいと叶を見つめる宗次郎。
叶も再び頬を染め……暫しの空白のあと、首を僅かに縦へ傾けた。
それを合図に、宗次郎は叶に微笑みかけ──、ゆっくりと口付けを落とした。
三度目の正直
HAPPY START…?