第3章 夕涼みの安息
「ああ、元はと言えば叶さんの自業自得ですから。」
「ほらね。だってめっちゃ笑顔だも、やっ!こ、こら!だからおでこ以外に当てるでない!」
「何感じてるんですか。」
「かっ…!?」
「こんなので感じるなんて変態ですね。」
「違うわ、あほ!」
違うわ、ばか!
なんでほっぺや首に氷押しつけられて悦ぶんだよ。そんな発言出てくるおまえが変態だわ。あほか。頭パーだな、さては。
「宗次郎変態卑猥嫌い最低人でなしろくでなし馬鹿あほ鬼…」
「はいはい、煩い病人は早く寝てください。」
「煩いは余計でしょ。」
「ちょっとは寝ないと損ですよ。」
「宗次郎のせいで頭が冴えて眠れない。」
「馬鹿言ってないで寝てください。」
ぽんぽん、と頭に柔らかい感触が降ってくる。
「…子供じゃないし。」
「へえ、大人だったんですか。」
「一々腹立つな。てか、これで寝ろとか無理でしょ。」
そうだ。なんかすぐ横に寝転びだした。こんな近くに宗次郎の顔があれば、むかついて眠れないに決まっている。なんの拷問だ。
「はいはい、添い寝しますから。」
「別に一人で寝れるんだけど。」
「何かあったらどうするんです。病人が一端の口聞かないでください。」
「…わっ、ちょっと見えないんだけど。手邪魔。」
「そろそろ大人しくしましょうか。」
「…五感支配されてるのでしょうか、これは。」
「さあ。…余計なことは考えなくていいですから。目瞑れば眠くなりますよ。」
「…はーい、寝ますよ…」
「ええ、おやすみなさ」
「すぴーっ。すぴーっ。」
…一瞬で寝たんですね。早く寝ましょうって言いましたけど、どれだけ早いんですか。
「本当に子供ですか…あなたは。」
「…うーん、むにゃむにゃ…」
「…情けない顔してますね。」
「……宗次郎……」
…あらら。なんです、僕の手なんて握り締めてきて。
…なんだか珍しく、か弱く見えますね。あんなに文句を言ってた人がこんなに無防備に大人しくして。
もう少ししたら氷を取り替えてきましょうか。早く治ってもらわないことには、一向に落ち着くこともできませんからね。
夕涼みの安息
(…大人しくしてると可愛いのになあ。)