第17章 窮鼠猫を噛む
物凄い雨嵐のような剣幕に、さすがの私も胸に手を当てて自分の行いを振り返らざるを得ない。
……も、何も出てこない。ただの屍のようだ。
「えっと…私、何をしでかしてしまったのでしょう。」
「てめーをナンパしようと声掛けに言った兄貴をヘドバン頭突きでぶっ飛ばしただろーーが!!」
「へ?」
「おら、あれ見ろ!兄貴の姿をよ!」
見ると10メートルくらい離れたところに結構大柄の男が鼻血を出して倒れていた。驚愕。
「まじか…!ヘドバン頭突きか!秘められた私の戦闘力ついに開花!これで志々雄さんの役に立てる!」
「なにごちゃごちゃ言ってやがる!」
「どう落とし前つけてくれんだよ、ああ!?」
「…ああ、そうか!これピンチなのか!そういうことか!ごめんなさいごめんなさい!悪気はなかったんです!!」
「何を今更!」
「いや、まじでまじで!もっと言うと私も被害者でして!今あらぬ嫌疑をかけられそうになってたとこで!お宅の兄貴を巻き込んでしまったことは本当にごめんなさい!もうなんと詫びればいいのか…勘弁してください!」
とにかくひたすら謝って謝って謝りまくろう。
そうしているうちに、
「もういいんじゃねーか、面倒くせぇ。」
「ったく…!とんでもない目に合ったな。」
「このガキうるさくて敵わねーしな。もう置いていこーぜ。」
「あああ…それで済むんですか…なんて慈悲深い…!」
宗次郎より優しくない?とか思ってしまう。
「おい、なんかこいつ気持ち悪いよな。」
「たしかに。病院紹介してやろうか。」
「なにをっ…違、本当すんませんしたっっっ!!」
頭を下げて下げて下げて、その取り巻き連中が立ち去ろうとした時だった。
「叶さんー?」
「へっ!?(その声は……!?)」
振り向くと、角からこの裏路地へと入り込んできた…宗次郎がそこに立っていた。
「あ、見ーつけた。」
にっこりと宗次郎は微笑んだ。
窮鼠猫を噛むどころか猫ぶっ飛ばした、のち
最凶来たる。
(ロマンス?なにそれおいしいの?)