第16章 まさかのスイッチ
「なにそれ!?それ、友達なの!?叶やばい奴に囲われてるんじゃない!?」
「いやいや!そんなんじゃないから!(まあ志々雄さんは決して健全な一般人とは言えないよなぁ…)」
「ほんとに!?叶ぼーっとしてるからなぁ…ここはいっちょ、あたしがガツンと!」
「いやいやいや!ほんと!本当に大丈夫だから!」
勢いづいていく操を叶は慌てて制した。
「え、なんで!?」
「違うの違うの、そういうんじゃないの!」
しかめっ面をする操。叶は宥めてこの場を落ち着かせようと懸命に言葉を模索する。
「悪い奴だけど、意地悪な奴だけど…」
「…」
「すっごく腹立つ奴だけど、何度もぶん殴りたいと思ったことあるけど、決して、決して悪人じゃなくて!」
「悪い奴だけど、悪人じゃないんだ??」
「うんっ…!そんなんじゃなくって……うまい言葉が出てこないけど…!悪い奴じゃないの…」
「あれ、さっき悪い奴って言ったよね?」
「あ!う、ううーん…そうなんだけど、そんなに悪い奴じゃなくって……」
「む、難しい人だなー…」
ええっと…と言葉を詰まらせながらも必死に否定しようとする叶に、操はふと気付いた。
──叶の頰が赤く色付いていることに。
その仕草はまるで。
加えて、先程からの様子や受け答え。
ピンときた操はぽんぽん、と叶の肩に手を置いた。
「叶…そいつに恋してるんだね。」
「へ?」