第16章 まさかのスイッチ
『ボウヤへ。ちょっと町までお買い物に行ってきます☆』
「…帰ってきたらお仕置きですね。」
叶の部屋に残されていた置き手紙。もちろん書いたのは叶である。
宗次郎は笑顔で手紙をぐしゃ、と掴んで丸めて捨てた。
「!!うわ、今なんかすっごい悪寒した!!」
町に下りてきていた叶はぶるっと身震いした。
(これはきっと殺気というやつだわ…そうに違いない…!心当たりはたった一つ、ふざけて手紙に書いた「ボウヤへ」…!!)
「叶?どうかした?」
「聞いてよ操ちゃん。私家に帰れない、殺される。そんな念が送られてきた。」
「なにそれ。」
隣で一緒に歩いていた操は反射的に吹き出した。
「叶さぁ、一度ちゃんと病院で看てもらった方がいいよ。」
「うん、私もそう思ってる。」
「思ってるんだ!?…あ、ここよ!このお店がそうよ。」
操は笑顔で叶に指し示した。
「ここ…?」
* * * * *
「ありがとねー操ちゃん、一度ならず二度までも。また町の案内してもらって。」
「あれ?五、六回はしてると思うけどな。ま、いいってことよ!」
操は得意気に胸を打った。
「また叶が一人で出歩いて迷子になって、悪い奴らに絡まれたらと思うと気が気じゃないからさ。」
「いや!さすがにもう大丈夫!」
叶は笑った。
操もつられて笑顔を浮かべたが、やがて叶の手元をまじまじと見つめる。
「でも、ちょっと高そうなの買ってたよね?」
「まあ…ちょっとね。えへへ。」
少し照れたように叶は微笑んだ。
「…前に言ってた、叶の友達に?」
「うん。…こないだね、私すっごい失礼なこと言っちゃったんだ。それでなんていうか。」
「そうなんだ。」
「普段こき使ってくるし怖いし意地悪だし殺しにかかってくる奴だけど。」
操は仰天し、思わず目をかっぴらく。