第14章 賽は投げられた
いっぱいいっぱいで、思わず否定したけど、追い打ちをかけられる。
「おかしいな。叶さん、こんにゃく好きじゃなかったですか?」
「…違う。こんにゃくは好き、食べる。」
「こんにゃく“は”?」
「………そんなこと言ったっけ?」
「ふーん。」
にこにこと微笑まれる。
…まずい。なんかまずい流れだ。手のひらで転がされてる気がする。
流れを変えようとしてお皿を宗次郎の方に差し出すものの、宗次郎はひょいっとお箸を遠ざけてしまう。
「あ!ちょっと、」
「…叶さん、今ちょっと動揺してますよね?」
「も、もう、うるさいなぁ、ちょうだい!」
「え?熱々のこんにゃく口に突っ込んでいいんですか?」
意地悪な言い方とは裏腹に、頬を優しく手で包み込んでやるとみるみる瞳孔が開いていく。
「もうっ…!じ、自分で取り分ける!」
──彼女の顔が紅潮していくのを目の当たりにした僕は、唇の両端を吊り上げる。
「…叶さんは僕のこの顔に弱いんですね。」
「ぶっ!」
「覚えておこうっと。」
「けほけほけほ…っ!!ち、違うもん!いつもと違うからびっくりしただけだもん!」
「いつもと違う…。じゃあ、」
ふいに叶さんの顔を覗き込むと、びくっと身を縮める。
「…っ…?//」
「さっき、キスした時も…」
「!!」
大方、思い出して居たたまれなくなってるんだろうなぁ。真っ赤に染まる顔にもっと意地悪をしたくなる。
「…ひょっとして、やばかったんじゃないですか?」
「~~!//」
「普段と違う姿に興奮する…というやつですか。叶さんはそういう嗜好なんですね。」
「じ…じっくり解析しないでください!//」
ぽかぽかと非力な力で胸を叩かれたけど、反応を見るに、結構キスの効果はあったのかなと思う。
思わず口元が緩んだところを、叶さんに睨みつけられた。
──せいぜい、愛らしい馬鹿でいてください。でも、この先もっと追い詰めてあげますからね。
心の中でそっと呟いた。
賽は投げられた
(宗次郎の色気が半端ない。ちょっと分けて欲しい…//)