第14章 賽は投げられた
………見えない。
普通好きだからキスするんじゃん?
でも、これ微塵も私のこと好きじゃないよね?絶対、馬鹿としか思ってないよね?しかも、さっきの白けた目!!好きって思ってる相手に普通はしないよ。
そう、決して色っぽいとかなかった。私の記憶違い。あ、私の方が何か変なもの食べたのかもしれない、知らないうちに。もうそれでいいや。病院行こ。
「もういいや、おでん作りすぎたからどんどん食べて。」
「おでんっていうか、こんにゃくと大根とたまごしか入ってないじゃないですか。れっきとした嫌がらせでしょ。」
「あり合わせだったから練り物なかったのよっ!!宗次郎が急に体調不良になんてなるから!」
「だから違いますってば。」
やれやれ、と呟く彼の姿に、さっきまでの疑問がまた再燃してしまう。
「……じゃあ、」
──なんでキスしたの?
──私のこと、好きなの?
そう聞けばいいのに。当然の疑問だから聞けばいいのに、聞けない。さあどうして?
「………なんでもない。」
「…」
(…聞かないんですね。)
馬鹿は馬鹿なりに聞いてくれればいいのに───
「……な、なんでもないから……」
「…はい叶さん、あーん。」
「た、たまご丸ごとじゃん!あーん出来ないって!」
「仕方ないなあ。じゃあ大根で。」
「そんなに熱いの無理だよっ。」
「気が利かない人ですね。せっかくの人の好意を。」
「嫌がらせにどう応えろと?」
やっぱり、意地悪ないつもの宗次郎だ。──そう思った時、
「じゃあ……これは、好き?」
それだけの言葉だったのだけど、甘い、澄んだ声に言葉に、ふいにドキッとしてしまった。
一度逸らした視線を恐る恐る戻すと、こんにゃくを箸で摘まんでらしただけだった。しかし、その…とても綺麗で端整な微笑みを向けられてた。
突然そんな、らしくない表情向けられたりしたら…ドキドキするしかないじゃない。
「……好、きじゃない。」
「ふうん…」