第13章 敗北宣言
「…宗次郎、いるー?」
彼の部屋の前で呼び掛けてみる。しかし…何の返事も返ってこない。──そう思いきや。
「いますけど?」
開いた扉から見慣れた顔が私を見つめてきた。
…やっぱり私も乙女だから。
宗次郎の顔見た瞬間「この唇が私のここに…!」って…。でも一瞬ね、一瞬!!それでもって、「この人が私のファーストキスの相手かぁ」…とかね!
うん、そう思ったりもしたけど!今はそんなこと思ってる場合ではない!!
「は、はろー!」
ああ、開口一番、失敗した…なんだこの挨拶…!純日本人の癖に何気取ってんだ私は…!
「叶さん…間違っても他所で言っちゃダメですよ。恥さらしですから。」
「あ、あははは。そ、そうだね!(いつもなら怒るけど!)」
「……なんか、厄介な物持ってきました?」
じとっ、と私の抱えるものと私とを交互に眺める。
「…なんですか、これは?」
「ああ、おでん!」
「おでんという名前の暗器ですか?」
「火傷して死ね。…いやー、宗次郎お腹空いてないかなーって思って…」
「別に空いてないですけど…」
「寒がってないかなーと思って…」
「なんなんですか、突然。それらの結論に至るまで何があったんですか。」
…しまった。そんなこと、考えるまでもないのに。僕は後悔した。