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彼に食ってかかられる

第8章 想い、ひとひら


「じゃあ…これは?」

「!…っ!」



や、やだやだやだ。



「あ、しっかり反応しますね。」

「…ひゃ…っ…」



つー…っと宗次郎の指が耳の輪郭を滑っていく。何度も、何度も。



「…っ」

「……隙ありっ。」




へ?隙?は?


……ああああああっ!!



「ひ!!卑怯者ー!!!」



なんてこと!さーっと、いとも簡単に、私の書面は奪い去られたのだった。


「ふふ、油断禁物ですね。」

「油断なんてしてないもん!油断させられたんです!」

「どっちですか。」

「私だってわかんない。」



もうどっちでもいい。そりゃ支離滅裂にもなるよ!



「…ひょっとして。」

「?」



急に宗次郎がはっとした顔をしてきた。なに、なんなの。



「手紙ですか?これ。」

「!……そうです。」



ああああ…終わった、はあ。けなされるんだ。馬鹿にされるんだ。晒し物にされるんだ。

無念を感じて溜息をついたが、目の前の強者はまじまじと私を見つめるのだった。



「…?」

「叶さん。」

「はい?」

「…ひょっとして。」

「はあ?」

「これ、四乃森さんに?」



真っ直ぐな瞳で聞かれる。



「…………」

「…………」

「……はあ、まあ…そうです。」

「…そうなんですか。」

「はい…」

「…恋文、というやつですか。」

「…………はい。」



じっくり一言一言問われると、答えてて恥ずかしくなってきた…



「ああ、そうなんですね。」

「…じっくり言わないでください、照れます、居たたまれないです…」

「ああ、そうなんですか。」

「そうでしょ普通。」

「ああ、そうなんですね。」



あーあ、宗次郎に見られるなんて。



「もうやだ…」

「ああ、そうなんですか。」



「………あの、なんか上の空っぽくないですか?」

「ああ、そうなんですね。」

「……」



?なんだ?どうしたんだろ?



「……あ、これ返しときます。」

「へっ?えっ?」
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