第54章 【お正月夢】初春に咲きそろう
──とても一生懸命に着飾ったのだろう、それは自分にそう思ってほしい、という気持ちもあってのことで…それを可愛くないだなんて、そんなこと。
「可愛いです…!」
柄にもなく、宗次郎はせき立てるように告げていた。
「…えっ///」
「その、可愛いですよ…」
「え、あっ、えっ…!?」
やはり恥じらいがあるのか、頬を染めて連呼する宗次郎だったが、普段なかなか面と向かってそのような言葉を聞くことのない叶は、自分から聞いてみたことではあるものの、あたふたと宗次郎の瞳を見つめる。
「…えっとごめん、無理に、」
「叶さんに言わされてるんじゃないですからね…?」
「あ、はい…///」
矢継ぎ早に返されて、にべもなくその先の言葉を見失うと同時に、再び、今度は急速に込み上げてくる熱に叶は酔い痴れてしまいそうだった。
「…ありがとう。なんだか一生、大事にしまっておきたい言葉、かも…」
「…多分、そんな大それた言葉ではないですよ。大げさですよ。」
謙遜なのか、暖かなものを見るような瞳でそう穏やかに宗次郎は言ったけれど。
「だ、だって!嬉しいんだもん!」
──自分でも思っていた以上に大きな声を発していて。叶は思わず赤面するけれど。
「嬉しいんだもん…宗次郎の口から聞けるなんて…」
「…そっか。」
「……な、なのでっ、こ、これからもそうあり続けたいと思った所存。」
…何を言ってるんだろう、ああ。こういう時に限って出てこない、伝えるべき言葉が。
それでも宗次郎の舎弟か。いや、舎弟じゃなくて。
「そう…ですか。わかりましたよ。」
勢いに気圧されたのか、大人しく、けれどふんわりと優しい声音で呟いた宗次郎の視線がこちらへと絡まる。
未だ淡く火照った頬に清んだ瞳。思わず照れて、その瞳から目を逸らしそうになるけれども。
代わりに、いや、頑張って。一度噤んで結んだ口元を、笑みの形に綻ばせて。
「…宗次郎の恋人なので、嬉しかったです。」
「……どういたしまして。」
眉の力を抜いてふっと笑った宗次郎。
それを見てこちらもいくらか緊張感が解れ、惚れ惚れとした気持ちに想いをくゆらせていく。心地よい快さを感じていたのだが、最中。