第53章 【ハロウィン話】お菓子といたずら
「宗次郎!」
「はい。」
のど飴を差し出す宗次郎。
にこにこと普段通りの笑みを浮かべている彼を叶は呆然と見つめた。
「……」
「いらないんですか?」
「…いる。」
促されて、しぶしぶ受け取りながら叶はぶーぶーと不満を漏らした。
「のど飴って…おじいちゃんか…」
「僕がおじいさんなら叶さんはおばあさんですけどね、落ち着きのなくて騒々しい。」
「最後のくだりいらなくない?」
予期しなかった展開にあーあ、と呟きながらのど飴を口に放り込んだ。途端に目を見張る。
「…おいしい。」
「じゃあ儲けものじゃないですか。よかったですね。」
「でもさ…」
「何か?」
「まだ何も言ってなかったのに…言わせてほしかったなぁ。」
「どうせあれでしょ?とりっくおあとりーと。」
叶ははっとする。
目の前の宗次郎はにこにこと屈託のない笑顔を浮かべて手のひらをこちらに向けていた。
「……」
「ほら、叶さん。」
「…ふっ。甘いわね坊や、そうは問屋が卸さないわ。」
「?」
「宗次郎は必ず奇襲で来ると折り紙つき!」
「織り込み済みでしょ。」
「そうとも言う!…どう!?今の私は一味違うくてよ。」
どや顔で宗次郎の手のひらに…懐から取り出した逸物を置いた。
目を丸くさせた宗次郎を見てますます満足げな顔をする叶。
「ふへへへ…」
「…叶さん。」
「はい!」
「干し芋はお菓子に入るんですか?」
「…え?」
叶の顔が引き攣る。
「はっ…たしかに…」
「砂糖に漬けてるわけでもないし…」
「はっ…たしかに…」
「というわけで、叶さん残念ながら…」
心なしか嬉しそうに微笑みながら叶の両手を手に取る宗次郎。
「ええっ、大目に見てくれないんですかー!宗次郎さん!」
「いえいえ、今まで僕があなたを甘やかしたことなんてありましたか?」
「た、たしかに。ないや。」
「はい。叶さんの負けです。」
「ええー…!」
「ほら、黙って。」
降りかかる爽やかな笑みの裏面には何かが潜んでいるようで。
「…何するつもり?」
「何って…なんでしょうね?」