第52章 【夢主誕生日話】特別な日
さすがの宗次郎も頬に熱を浮かばせる。
叶に見えなくてよかった、と思いながらその手は彼女の頭を優しく撫でる。
やがて、頑張りましたねという様に叶の肩をぽんぽん、と叩いたのだけれども、呼応するように叶はその身を少し浮かせたかと思うと──
──え、えっ…?
宗次郎の唇に己の小さな唇を重ね付けた。
固く瞑った瞼がその決意を物語っていて、宗次郎は暫し目を瞬かせた。
暫く事の次第を飲み込めずにいたけれど。やがて叶の頭を深く抱え込み、その口吻に応えるように瞳を閉じた。
「ただいま。皆でお菓子パーティーしよう!全部宗次郎の驕りだよー!」
無邪気に微笑んで朗らかな声を上げて帰宅した叶とその傍らに立つ宗次郎。
その光景を見た由美と鎌足は思わず顔を見合わせ、そして同時に叶に詰め寄った。
「「叶っ!」」
「は、はいっ!?//」
「あんたまさか…!」
「これだけの為にあの券全て使ったわけじゃないでしょうね?」
「それがその、ち、違いマス…//」
叶の真っ赤になる様を見て、はたと動きを止める二人。
「やだ…まさかしたの…?」
「外で…?」
「あ、えっと//…………うん」
「「え!?」」
「ちょっといいですか?」
こんがらがった糸を宗次郎が解くのに暫く時間を要したとか。