第52章 【夢主誕生日話】特別な日
「あ、あの…?//」
「…してほしいこと、ないですか?」
「!」
「何でも言ってくださいよ。」
“僕になんでも命令できるんでしょ?”
無邪気な声で言葉を繋げながら、宗次郎は悪戯な笑みを浮かべて叶を見下ろした。
「なんだって、しますよ。」
「え、え……っ…!?」
「ほら?いいんですか、このままで。」
ただただ戸惑う叶。
「……叶さん、何も言わないとこのままで終わっちゃいますよ?」
「ひゃ…っ//」
端整な宗次郎の顔が一層近付いて。ぴくり、と身体を震わせながら思わず固く目を瞑ると、頬に指とは違った柔らかいものが触れて。
「~~っ//」
恐る恐る目を開くと、眼前には瞳を閉じた宗次郎の顔。頬を滑るように辿っていく唇。
「叶さん。」
「だって…それじゃ、宗次郎にこんな風にされたから欲しがってるみたいで…」
宗次郎はぴたり、と動きを止めた。
彼女の方にじっと視線を向けると、戸惑いながらも熱の籠もった瞳で見つめられた。
いじらしいとでも言うのだろうか。まだ宗次郎はその感情を理解していなかったけれど、叶の頭をそっと撫でて笑いかけた。
「馬鹿ですね。叶だからいいんですよ。」
「う……//」
「…じゃあこうしましょう。」
宗次郎は颯爽と告げた。
「早くお菓子屋さんに連れていってほしければ、僕に甘えてください。」
「え、えっ…でもそれじゃこの券の意味が…」
「券なしで何でも買ってあげます。」
「じゃあ!」
「変わり身早いですね。」
途端に乗り気になる叶を見て思わず笑みをこぼす。つられて叶も一瞬笑うのだけれど、一呼吸置いた後に心持ち緊張したように。
「……じゃあ、//」
「あれ、早速してくれるんですか。」
「…ちょっと黙ってて//」
「はいはい。」
じっと宗次郎の肩や首や胸元などに目を凝らして、狙いを定めるように。そして、叶は彼にその身を寄せるようにして抱き付いた。
「…///」
「(おっ、と…//)」
叶の匂いと温もりに包まれ。