第51章 【宗次郎誕生日話】君の気持ちは不透明で気まぐれで
「…じゃあつまり、叶さんと。」
声色こそは平静でいたが、能天気に笑ってる叶さんに黒い笑みを浮かべ、そして。
「ん、んっ…!?」
両肩を押さえ付けるように掴み、間髪を入れずそのまま、ぼんやりとしている唇に自分の唇を重ねづけた。
しっとりと重ねて、そうして何度も交わしていくと唇と唇が触れ合う音が弾み響く。
目を見開いたまま赤面させた叶さんを満足気に見下ろして、瞳を閉じた。
何度も何度も、啄むように。食むようにくちづけを交わす。
「…っ、ん、はあ…っ…」
艶めいたような声に薄目を開くと、いつの間にか叶さんも目を閉じていて。
恥ずかしがりながらも僕の施しに身を委ねてる様が愛らしかった。
「んっ、苦しい…」
「…あはは、すみません…」
ようやく解放すると、涙目でけれどはにかむような笑みを向けられたから。
もう一度、次は触れるだけのくちづけを施して唇を離した。
「……つまり、叶さんといちゃいちゃできるってコトですよね?」
そう笑いかけると真っ赤になってしがみついてくるものだから。
優しく微笑んで頭を撫でて、じゃあケーキでも食べに行きましょうと声を掛けると。
「!」
今度は僕の両腕が押さえられて。
叶さんにキス、されていた。
突然のことにそのままぼんやりと叶さんを見下ろしていると。
「た、誕生日だから。私からもっ…」
恥ずかしげに見つめられて、そして抱きしめられた。
締め付けられていく想いと行き場を失いそうな程の嬉しさを抱き止めながら、その体を優しく抱きしめ返した。
君の気持ちは不透明で気まぐれで
──僕を弄んでばかり。
(叶さん…)
(な、なんでしょう…)
(今の、もういっかい。)
(え、ええっ…!?//)