第51章 【宗次郎誕生日話】君の気持ちは不透明で気まぐれで
──胸の鼓動が酷い。でも、絶対悟られたくない。
緊張を必死に押し殺しながら、平静を装った声で。
「…なんですか?」
「……お誕生日おめでとう!!」
最後には、ぎゅうっと目を瞑って。ありったけの声量で告げられて。
暫く状況を理解するのに時間がかかってしまった。
一呼吸も二呼吸も置いてから、先に言葉を発したのは悔しいかな、叶さんの方だった。
ぱちぱちと、瞬きを繰り返しながら僕の顔を覗き上げた。
「…あれ?宗次郎??」
「……何かと思いましたよ。」
「いやぁ、面と向かうと恥ずかしくなっちゃって。」
思わず額を手で抑えた。
なのに、叶さんは馬鹿みたいに、いえまあ馬鹿なんですけど、きらきらと瞳を輝かせて。
「そんなに驚くくらい、嬉しかったんだ!」
「……」
「あれ?まだ感極まってる?」
…これだから、はあ。
「叶さん。」
「?」
「ありがとうございます。」
「!いひゃい、いひゃい、いひゃい!」
ほっぺたをぎゅうう、とつまみ上げると甲高い声が漏れる。
「なんで抓るの~!?」
「僕の心を弄んだ分です。」
「ええっ?」
訳が分からないという顔をする叶さん。
やれやれ、という気持ちは消えないけど、次第に僕は微笑みを浮かべていた。
「…ありがとうございます。叶さん。」
頭を下げると、釣られていつものように笑う叶さん。
「こちらこそ、いつもありがとう。」
「…で、はい!これ!」
「わあ、もしかしてプレゼントですか?」
「うん!お納めくださいな。」
「すみません、気を遣わせちゃって……あれ。」
「♪」
小箱から取り出したのは何枚も何枚も綴り状になっている…
「肩たたき券…?」
「そう♪」
「どうしてこれを…?」
思わず訊くとあっけらかんと。
「え、いっぱいお得じゃん。肩が癒えるし、何より私と過ごせるし。」
「…まあたしかに。」
否定するいわれはない。
そう受け入れるしかなかったが、ふと澱みが澄みきるようにある思い付きが頭に浮かんだ。