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彼に食ってかかられる

第46章 こどもの日の思い出


「ねえ、宗次郎ってどんな子供だったの?」


宗次郎の部屋で寛ぎながら。何の気なしに叶はそう声を掛けた。

頬杖を突きながら反対の手で金平糖を摘まみ、何度も口に運んでいる。


「なんです?何の前触れもなく。」

「どんな風だったのかなってふと気になって。」


無邪気な目を覗かせている彼女。その表情は期待に満ち溢れていて。

そのような叶を見つめ返しながら。


「…僕にそんなこと聞いてきた人初めてですよ。」

「えっ、宗次郎それめっちゃ嫌われてるじゃん!大丈夫?ア、ちょ、金平糖投げんといて、地味に痛い!」




暫くして叶は散らばった金平糖を拾い上げながら、ぽつりと呟いた。



「まあ志々雄さんの懐刀、瀬田様には畏れ多くて皆聞けないのかも…まあ私は宗次郎のことクソガキだと思ってるから聞いちゃうけどね!」

「そう言う叶さんは弱虫世間知らずの文無しですよね。」

「あっ…文無しは酷い!違うの!今月だけ!志々雄さんの一張羅に珈琲溢しちゃったから今月だけお小遣い貰えないだけで!」

「ただの馬鹿でしょ。」

「そうだなぁ、じゃあ当ててあげよう。」

「叶さんに当てられるわけないですよ。」



* * * * *



「宗次郎、食糧と包帯を調達してこい。」

「はい、志々雄さん。」


それはまだ幼い頃。志々雄さんと二人であちこちを旅していた時のことだった。

志々雄さんの見た目では一緒に街を行くことはなかなか叶わなかったから。主に僕が街に出向き、物品の調達を行っていた。

ある街に趣いた時だけど。


「あのっ!ねえそこの子っ!」

「???」


──突然、ものすごい勢いで接して来た女の子。

思わず面食らっていると、息を切らしながら尋ねられる。


「私のお財布見なかった…!?どっかに落としちゃって…!」

「えっと、お財布…?見てないよ?」

「!そっかぁ…ありがとう…」


明らかにがっくりと肩を落としたものの、その子はまた走り出し立ち去っていった。

(大丈夫かな…?)



「…あれ?」


立ち去り際にぽさっ、とその子から落ちたもの。咄嗟に拾って追いかけて。

追い付いて声をかける。
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