第45章 ときめきへ道連れ
「なんでこうなるんだろうね、私たち。」
やや生気のない目で遠方を眺める叶。
彼女の声に宗次郎の意識はまた先程のところに引き戻される──何回目だろうか。
「…それは僕の台詞です。」
「いや、嬉しかったんだよ…」
「嬉しい?」
宗次郎は目を見開いた。
「嬉しい…」
「え…?なぜ首を傾げる?」
「嬉しくて、なぜこうなるんですか?」
えーと…と慌てつつも思考を巡らせる叶。
「だって…宗次郎が誘ってくれたんだもん。ワクワクして、何か漲ってきて張り切って…」
「だから?だからといって、せっかくのデートで階段から落っこちる女性がありますか。」
「ああっ…!そんなハッキリ言わないで…!辛い現実を叩きつけないで…!現実見たくない…!」
宗次郎の背中におぶさっていた叶は再び取り乱し顔を両手で覆った。
──そうなのである。宗次郎からの誘いでデートをすることになった二人であったが…宗次郎の供述通りそういうことが起きて今この状況に至るのである。
「しかもあんな派手に。」
「うっ。」
「しかも…お茶屋さん目前だったのになぁ。」
「ううっ。」
どんどん居たたまれなくなっていく叶は。
「…!や、やっぱりせめて食べてこ!宗次郎一推しの葛餅…!」
「なんで。やですよ。」
「そ、そんな。取り付く島くらい残そう。」
「足捻挫した女性を連れてるのに。」
「ううっ…!」
「応急処置はしましたけど…早く帰ってまともに手当てしないとダメですからね?」
珍しく眉間に少し皺を寄せながらこちらを振り返る宗次郎。
「…うん、わかった。」
「なら、よろしい。」
思わず頷くと、にこにこと笑顔を向けられた。…彼が言うのならば仕方ない。
だが。叶には別の悩みが生じていた。
「…宗次郎さん…あの。」
「はい?」
「……もうちょっと人気のないとこ行きませんか?」
「は…?はあ?」