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彼に食ってかかられる

第44章 で?


「…叶さん、」

「ん?」

「……」

「?」



「…伝言があったんですけど、すみません忘れてしまったみたいです。」

「えっ?そ、そう…」

「……あ、あの。」

「うん?」



「で…んき、電気に関することだった、かな…」


「え!?それ絶対私への伝言じゃないでしょ、方治さんじゃない?方治さん何が専門なのか難しすぎてわかんないけど。」

「ああ…そうですね。」

「あ、何なら方治さんに直接聞けば?すぐ何のことかわかってくれるんじゃない?」

「そうですね…」



さらりと笑いながら立ち去ろうとする彼女。



「……叶さん。」

「?」

「で……」



振り向く叶さん。
──彼女の瞳がこちらを向いていると思うと、覚悟なんていとも容易く瓦解してしまう。

気付けば叶さんの肩に手のひらを押し当て、



「…でーん。」

「……どしたの?大丈夫…?」











「は?デートに誘えない?」

「………」


いつもの余裕のある笑顔はどこへやら。
思わず素っ頓狂な声をあげた鎌足を前に宗次郎の身体は心なしか猫背になっているように思えた。


「何言ってんの?あんたそれでも彼氏?」

「……あまり大きな声で言わないでください。」


低くため息を吐きながら宗次郎は鎌足を見上げる。


「なんか…こう、言いづらくありませんか?」

「ぜんっぜん。」

「恋愛じみた言葉って恥ずかしくないですか?」

「意味がわかんないわ。」

「そもそも自分の心の内を口にするのが照れくさいんですけど。」

「なーに言ってんの!恋人同士じゃない!」

「わかってます。…わかってるんですけどね。」


「…そんなに叶を、キスしたい押し倒したい抱きたい願望が漏れるのに抵抗ある?」

「なんでそうなるんですか。」

「だって彼女じゃない。自分を曝け出したところで弱味を握られたりするわけじゃ…」

「……」

「……あ、あるまいし。」



「何か嬉々としてる叶さんの姿が想像つくんですけど…」

「ご、ごめん。私もちょっと……否めないわ。」


以前叶と共闘して宗次郎を嵌めようとしていた事件を思い出し鎌足は引き攣り笑いを浮かべた。
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